ア 訴状の審査等
事件の配てんを受けた裁判官(合議体で審理される事件については裁判長)は訴状を審査し,形式的に不備がなければ,口頭弁論期日を指定して当事者を呼び出します。訴状に不備があれば,裁判官(裁判長)は,原告に対して補正を命じます。
イ 口頭弁論
口頭弁論は,公開の法廷において,簡易裁判所では1人の裁判官により,地方裁判所では1人の裁判官又は3人の裁判官の合議体により,高等裁判所では原則として3人の裁判官の合議体により,それぞれ開かれます。地方裁判所については,法律に特別の規定がない限り1人の裁判官が審理することができます。もっとも,簡易裁判所の裁判に対する控訴事件は合議体で審理しなければなりませんし,事案が複雑困難である等の理由で合議体で審理する旨決定された事件についても,合議体で審理することになります。
口頭弁論期日においては,裁判長の指揮の下に,公開の法廷で手続が行われます。原,被告本人又はその訴訟代理人が出頭した上,事前に裁判所に提出した準備書面に基づいて主張を述べ,主張を裏付けるために証拠を提出することが要求されます。被告が欠席した場合には,被告が答弁書等において原告の請求を争う意図を明らかにしていない限り,不利な内容の判決が言い渡される可能性があります。
裁判長は,当事者の主張や立証に矛盾や不明確な点があれば,質問をしたり,次回期日にその点を明らかにするよう準備することを命ずることができます。この権限は釈明権と呼ばれます。
1. 裁判官
2. 裁判所書記官
3. 裁判所速記官
4. 廷吏
5. 原告代理人
6. 被告代理人
ウ 争点及び証拠の整理手続
判断に必要な事実関係について当事者間に争いがあり,争点及び証拠の整理を行う必要がある事件については,裁判所は,証人尋問等の証拠調べを争点に絞って効率的かつ集中的に行えるように準備するため,争点及び証拠の整理手続を実施することができます。
この手続としては,準備的口頭弁論,弁論準備手続,書面による準備手続の3種類があり,裁判所は,事件の性質や内容に応じて最も適切な手続を選択することになります。準備的口頭弁論は,公開の法廷において行われ,争点等の整理に必要なあらゆる行為をすることができる点に特色があります。弁論準備手続は,法廷以外の準備室等において行われる必ずしも公開を要しない手続で,争点等の整理のために証人尋問をできないなどの制約がありますが,一方の当事者が遠隔地に居住している場合などには,電話会議システムによって手続を進めることもできます。書面による準備手続は,当事者が遠隔地に居住しているときなどに,両方の当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点等を整理する手続で,必要がある場合には電話会議システムにより争点等について協議することができます。
これらの手続を終了するに当たっては,裁判所と当事者との間で,その後の証拠調べによって証明すべき事実を確認するものとされています。
エ 証拠調べ
口頭弁論又は争点及び証拠の整理手続において,当事者間の争点が明らかになれば,その争点について判断するために,裁判所は書証の取調べ,証人尋問,当事者尋問等の証拠調べの手続を行います。証人は,原則として尋問を申し出た当事者が最初に尋問し,その後に相手方が尋問することになっています。裁判所は,通常は当事者が尋問を終えた後に尋問を行います。もっとも,裁判長は,必要があると考えたときは,いつでも質問することができます。証人等の尋問の順序,誘導尋問に対する制限その他の尋問のルールは民事訴訟法及び民事訴訟規則に定められていますが,一般的に言って,英米法に見られるような広範で厳格な証拠法則は,日本の制度には存在しません。証拠能力に関する判断は裁判所の裁量にゆだねられていますが,裁判所は,基本的に,職権で証拠調べをすることはできません。職権で行うことができる当事者尋問はその例外です。
証拠調べの結果から事実の存否を認定する事実認定の過程では,証拠の証明力の評価は,裁判所の裁量にゆだねられています。
オ 口頭弁論調書
口頭弁論については,立ち会った裁判所書記官が調書を作成しなければなりません。調書には,法廷で行われた証人,鑑定人,当事者本人の陳述のほか,当事者の主張や証拠の提出を記載し,裁判所書記官が記名押印し,裁判長が認印をしなければなりません。また,裁判所には裁判所速記官がおり,裁判所書記官とともに口頭弁論に立ち会うことがあります。裁判所速記官の作成する速記録は,調書の一部として引用されます。