令和5年5月
憲法記念日を迎えるに当たって
最高裁判所長官 戸倉三郎
日本国憲法の施行から76周年となる記念の日を迎えました。
この間、裁判所は、日本国憲法の下、法の支配を揺るぎないものとするという使命を果たすために、国民から負託された司法権を適切に行使すべく努力を重ねてまいりました。変化の目まぐるしい昨今の情勢の中で、法の支配という理念の意義とその価値を共有することの重要性を改めて胸に刻んだところです。
司法は、法に基づき、公正で透明性のある手続により紛争を解決することを通じて法の支配を支えています。司法に対する国民の期待に応え、その信頼を確かなものとするため、裁判所は、その紛争解決機能を一層高めていくための努力を続けていかなければなりません。そのためには、現在、裁判所が重点的に取り組んでいる裁判手続のデジタル化も、国民の司法へのアクセスの利便性を高めるとともに、裁判手続全体を合理化、効率化し、複雑困難な事件への対応力を高め、審理期間の長期化といった課題を解決していく契機としていくことが重要であると考えます。
憲法記念日を迎えるに当たり、日本国憲法が具現する法の支配の理念の重要性と裁判所の職責の重さを改めて自覚し、国民から信頼される司法を実現するために最善を尽くしてまいりたいと思います。