岡正晶最高裁判事就任記者会見の概要

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令和3年9月3日

【記者】

 最高裁判事に就任すると聞いたときの感想と抱負をお願いできますでしょうか。

【判事】

 まず,内定したというお話を聞いたときは本当にびっくりいたしました。ノミネートされていることは知っておりましたけれども,私の所属弁護士会の関係でありますとか,年齢等とかを考えて,まず私には回ってこないんだろうなというふうに思っておりましたので,とてもびっくりいたしました。その後,いろんな方からお祝いの言葉をいただくにつれて,本当に責任がある重い立場に就くんだなと,裁判官という仕事は初めてなわけですから,そういうところで最後の重大な判断をしなければいけないという重責感といいますか,そういうものがひしひしと強くなってきたというのが正直なところでございます。
 抱負といたしましては,弁護士の仕事をしている頃から,よく調べ,よく考え,分かりやすく説明すると,こういうことを信条にしてきておりましたので,最高裁の判事になるに当たりましてはそれをちょっとモディファイいたしまして,記録・資料をしっかり読み込む,自分の頭でよく考える,分かりやすく自分の意見を説明する,それに加えて,5人あるいは15人の合議あるいは審議をしっかりやるというか,化学変化が起こるような,お互いに納得できるような充実した議論をしなければいけない,そういうふうに思いを新たにいたしました。

【記者】

 これまで39年の弁護士としての経験を,今後の職務にどのように生かしていかれるかお聞かせいただけますか。

【判事】

 弁護士としての経験といいましても,いろんな弁護士がいるわけで,先任の草野さん,渡邉さんともまた違った弁護士としての経験を私は積んできたと思っております。倒産事件が多かったこと,租税とか倒産の論文を書いてきたこと,会社絡みの事件が多かったこと,最近はメガバンク,メガ生保の社外役員を務めていたこと,そういうことが私の経験の骨格だと思っております。それが私自身の良心なり,知見の基礎となっておりますので,そういう自分の経験をフルに生かして,自分としての良心をフル活動させて,1件1件きちんと当たっていきたいと。それが私の経験を生かす道ではないか,そういうふうに考えております。

【記者】

 最高裁でつい先日夫婦同姓訴訟がありましたように,多様性を尊重する社会の実現を求める声というのが日増しに大きくなっていると思います。こうした声に裁判官としてどのように向き合っていきますでしょうか。

【判事】

 多様性を認め合うニーズだけではなくて,私自身が最近特に感じておりますのは,グローバル化でありますとか,技術の進展でありますとか,多様性だけではなく他にも大きな問題があるという問題意識が一つございます。そういう大きな問題について,まずは民間がどう動いてどう対応しているのか,行政がどう動きどういう状況にあるのか,国会がどういう状況にあるのか,そういうものを全て見た上で,国家権力の一つである司法,特に最終審である最高裁判所がどういう判断を下すべきなのか。民間,行政,国会,そういう関係の中で司法が果たすべき役割,それをきちんと考えていきたいと思っております。

【記者】

 倒産事件のやりがいについて,どういったところに魅力を感じたのか。倒産事件の経験から,最高裁判事としてどういうふうに生かしていきたいのか。もう一つが,メガバンク,メガ生保での社外取締役としての経験というのをどのように生かしていきたいのか。先ほどおっしゃられたように,行政,民間だとか,国会とか,司法,国会の動きというのを見ていく,そういう視点に今申し上げたような経験があるのかお願いします。

【判事】

 倒産事件のやりがいですが,本当に若い頃に,東京地裁から破産管財人に選任されまして,裁判所から信頼されて一つの事件をやれと,こういうことに非常にやりがいを感じました。だんだんと倒産事件を多くやってくるにつれて,大きく言うと二つ,自分としてはやりがいを感じました。一つは,破産であれば,全当事者に公平に財産換価の上で配分すると,事業再生であれば,従業員さんの立場を考えながら,救われるべき事業価値については事業価値を救って,取引先,従業員さんの立場を守ると。そういう倒産事件の持つ社会的意義にやりがいを感じていました。もう一つは,弁護士としては当事者の利益を最大限主張して裁判官の有利な判断を引き出すと,こういうのが弁護士の基本的な仕事ですが,倒産弁護士というのは,自分が当事者の主張を聞いた上で,公正な判断を下していくのが大きな仕事です。法律問題のるつぼだというふうに言われますけれども,そういう裁判官的な公正な判断をする,そういうところに私自身としてはやりがいを感じてきました。
 倒産事件の経験をこの裁判官の職務にどう生かすかというところですが,刑事も民事も行政も少年も,いろんな事件が来るわけで,それの一つ一つに倒産事件の経験,知見がどう生かせるのか,それは自分自身にもまだよく分かりません。ただ,いろいろな人の利害が錯綜するところを見てきました。その利害が錯綜するのを,どんなふうに裁けば一番妥当な結論が得られるのか。こういうことは,修練を積んできたつもりですので,その修練を生かした判断ができればいいなと,ちょっと抽象的で申し訳ないのですがそんなふうに考えております。
 この五,六年は,メガバンク,メガ生保の監査等委員としての仕事に注力をしてきまして,本当に違う世界を見ました。グローバルに展開しないといけない,金利,金融をどうハンドルしていくのか,新しいフィンテックにどう対抗していかなければならないのか,幅広くかつ先端的な,時代の最先端でもがいている企業のガバナンス面を見てきたところであります。それと司法,ある意味最終判断と言いながら時代の最先端のところを判断する局面もあるとは思いますが,両極端なところにうつるのではないか,そういう思いを持っています。しかし時代の最先端でもがいている民間の姿を見ていたという経験を,司法として判断していく際に,有益になるように生かしていきたい,こんなふうに思っております。

【記者】

 香川県の御出身と伺っております。高校卒業までおそらく香川県で過ごされたと思いますが,どういう少年時代を過ごされたのか,どうして法曹の道に進まれたのか,教えていただければと思います。

【判事】

 香川県の当時はまだ高松市ではない綾歌郡という田舎町の田舎教師の次男として生まれました。まだ当時は,農繁休業といって,田植えの時期と稲刈りの時期に三,四日間休みがあるような時代でした。周りは段々状になった小さな田んぼが多いところで,まだ砂利道に荷車を引く馬のふんが残っているような場所で,のどかな所で,30分くらい歩いて小学校に通っていたのを思い出します。まあ,田舎の少年だったと,そんなふうに思います。
 高校のときに,法学部に行こうと決めて,そのときには弁護士とか裁判官とか具体的には決めていなかったのですが,まだ今のようにデータが大事だとか,理系が大事だとか,技術が大事なんだということが言われていない時代で,公害紛争などがまだ裁判で残っていましたし,社会が変わるのに,法律がまだ今よりも,違った意味で大きな意味を持っていた時代と感じて,まずは法学部に行こうと思いました。法学部の中で,役人になる人たちも多かったですが,やっぱり田舎育ちですから,現場に近いところで社会が良くなるような動きができる仕事がいいかな,そこで頑張ってみようかなと,そういう思いで弁護士になったように思います。もう50年くらい前なので,ちょっと記憶があやふやですが,そんなところであります。

【記者】

 法制審で債権法の改正にも携わられたとお聞きしておりますが,その経験を通して感じられたこと,あとは最高裁で生かせるような部分というのはありますでしょうか。

【判事】

 民法の債権法部分の改正の法制審の部会に,六,七年最初から最後まで所属いたしました。こんなに長い期間の法制審の部会も初めてでしょうし,民法の中核部分の改正というのも初めてで,非常に大がかりな議論が幅広くなされました。二つ大きく感じたことがございまして,一つは,法律をまとめることの難しさ,弁護士も含めていろんな人がいろんな意見を言う中で,法律として一つにまとめなきゃいけない。それをどういう形でまとめれば,みんながそれなりに納得するのか。そこのさじ加減,法律を作る難しさを痛切に感じました。私自身としてはみんなが67点くらいかなと,そう思えるようなところを探っていくのが立法なのかな,法務省さんは大変だなと思ったのが一つであります。もう一つは,40人くらいの大所帯でしたけれども,東大の先生,京大の先生,労組の方,商工会議所の方,全銀協の方,いろんな方がいらっしゃって,それぞれ論客で,ある意味非常に楽しかった,自分の意見を述べて,それに対する反論があって,他の人がまた違う意見を言い,それに対して自分がそれらを踏まえた違う考えを述べると,また議論が発展していく感じです。その議論の深まりというか広がりの楽しさ,そういうものを強く感じました。その二点が大きな思い出になっています。この後者の点は,最高裁での合議,評議に生かせるのではないかと期待しています。

【記者】

 先ほど,最高裁にはあらゆる種類の事件があがってくるとおっしゃっていましたけれども,ちょっと抽象的で恐縮ですが,そういう中でも特にどういった分野の事件に力を入れていきたいと考えているかというのが,今の時点で,もし意識しているものがあれば教えていただけないでしょうか。

【判事】

 倒産とか租税とか自分が今までやってきたところはイメージが沸くのですが,仕事としてそんなに深めた研究,勉強をしていない分野,刑事ですとか,行政ですとか,家事ですとか,そういうところをきちんと,土地勘がないだけにしっかり調べて,自分の頭で考えて,みなさんと議論して,それぞれの専門分野の専門家の方々に比肩するような意見,判断をしなきゃいけない。土地勘のないところについてこそ,特に注意力,警戒心を持って頑張らなきゃいけない,そういう思いが今は強いです。

【記者】

 趣味や読書の傾向みたいなものがあれば御紹介いただきたいのと,あわせて,プライベートなことで家族構成などを差し支えない範囲でお教えください。

【判事】

 まず趣味ですが,今は山のトレッキングが多いです。月に2回くらいはそれなりの山に登ろうと,ツアーに参加したり,自分で登ったりそういうことが今は多いです。
 それから,読書の傾向ですが,ここのところは海外旅行にひっかけて,長い本を読もうというシリーズを五,六年続けております。シルクロードに行ったときは「西遊記」,スペインに行ったときは「ドン・キホーテ」を読み,コロナ禍になる前にはギリシャに行こうと思っており,「イリアス」,「オデュッセイア」を読みました。結局行けませんでしたが。コロナ禍では13冊ある「千一夜物語」に挑戦し,この間読み終えました。また,メガ生保とメガバンクの社外役員の関係で,金融関係の勉強もしないといけないと思っておりましたので,白川方明さんの「中央銀行」という厚い本を読みました。中身はあまり理解できていないのですが,よく考え,分かりやすく説明するという意味では,とても勉強になる本でした。
 家族構成は,妻と4人の子供がおりまして,女,男,男,女です。また,3人の孫がおりまして,今日にでも生まれておかしくない4人目の孫を今か今かと待っているところでございます。

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