令和6年8月16日
談話
最高裁判所長官 今崎幸彦
この度、最高裁判所長官に任命されました。職責の重大さを痛感しています。
裁判所の基本的な役割は、個々の事件を適正かつ迅速に解決することに尽きますが、そうした一つ一つの営為の積み重ねを通じて、国民の権利が擁護され、社会の基盤となる法秩序の維持が図られて、法の支配が社会の隅々まで行き届くことになります。その実現こそが司法に課せられた使命であると考えます。
司法が扱うのは社会に生起する紛争です。近年、少子高齢化、人口の大都市集中をはじめとする我が国の社会経済構造の変化が進行し、人々の意識や行動様式の多様化も加速しています。社会における様々な場面で利害の対立が厳しさを増し、価値観を巡る立場や意見の相違も顕在化するようになってきました。こうした社会の動きは紛争のあり様に反映され、裁判手続においても深刻で解決の難しい事件の増加につながっているように思われます。
そうした中、裁判所は、司法制度改革の諸成果を実務運用につなげながら、その後の変化にも対応するべく取組を進めてきました。しかし、社会の動きは更に速度を増しており、取り残されないためにはなお一段の努力が求められます。司法分野におけるデジタル化はそのための取組の一つとして位置付けられるものですが、課題はこれにとどまるものではありません。司法の本質を踏まえながらも、時代のニーズに適切に対応できるよう、裁判所を挙げて取り組んでいきたいと考えています。
冒頭に司法の使命について述べましたが、もとよりそれは独り最高裁判所だけでできることではなく、全国の一つ一つの裁判所の裁判官、裁判所職員がそれぞれに託された職責を自覚し、適切に遂行することによって初めて実現されます。微力ではありますが、彼ら彼女らと共に司法の使命を果たすことができるよう力を尽くしていきたいと考えています。
国民の皆様におかれては、司法に対し、一層の御理解と御協力を寄せていただきますようお願い申し上げます。