令和4年6月24日
談話
最高裁判所長官 戸倉三郎
この度、最高裁判所長官に任命されました。改めて、その職責の重大さを痛感しています。
申し上げるまでもなく、裁判所の使命は、個々の事件の適正妥当な解決を通じて、国民の権利を擁護し、社会の基盤をなす法秩序の維持を図ることにあります。日本国憲法とともに現在の裁判所制度が発足して75年がたちましたが、私どもは、国民から負託された司法権を適切に行使し、その使命を果たすべく努力を重ねてきました。
また、この間、我が国の社会経済情勢や人々の価値観は変化を続けてきていますが、裁判所においても、時々に生起される紛争の内容や、社会のニーズに応じて、審理運営上の工夫を重ねるとともに、裁判員制度を始めとする司法制度改革の成果を定着させるなど、その変化に応えてきたところです。近時は社会のデジタル化が急速に進んでおり、司法の分野においても、時代の要請というべきデジタル化を確実に進めるとともに、あるべき審理運営の姿を意識しながら、これに即した審理・判断の質の向上に取り組んでいかなければならないと考えています。
感染症の世界的な流行がなお終息には至っておらず、また、これまでの国際秩序を揺るがすような事態も生じるなど、現下の社会経済情勢には先行きの見通しが難しいところもあります。そうした中において、裁判所がその使命と責任を確実に果たすことにより、法の支配の実現を揺るぎないものとし、裁判所利用者のニーズに的確に対応していくための不断の努力を続けていくことが、以前にも増して重要となるように思います。
私は、就任に当たり、これまで築き上げられてきた司法の良き伝統を受け継ぎ、これを更に発展させて、国民から信頼される司法を実現するため、全力で取り組んでまいる所存です。
国民の皆様におかれましても、司法に対し、一層の御理解と御協力を寄せていただけますようお願い申し上げます。