トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第1回医事関係訴訟委員会議事要旨
1. 日時
平成13年7月13日(金)
2. 場所
最高裁判所大会議室
3. 出席者
委員,敬称略
大西勝也,鴨下重彦,川名尚,菊池信男,木下勝之,黒川高秀,杉本恒明,永井多惠子,橋元四郎平,平山正剛,森 亘,山口武典(武藤徹一郎は欠席)
事務局
千葉勝美,林 道晴
4. 議事
(1)最高裁判所長官あいさつ
(2)委員紹介及び自己紹介
(3)会長互選(森委員を選出)
(4)会長代理指名(大西委員を指名)
(5)これまでの経緯の説明(事務局)
医事関係訴訟において鑑定人の確保に困難を極めていること,平成12年10月から平成13年5月までの間合計4回にわたって,医学界及び法曹界の有識者若干名で,鑑定人確保の問題の含めた医事関係訴訟の審理の在り方についての意見交換や,具体的な事案5例についての鑑定人候補者の試行的推薦を行ってきたこと,その意見交換において,医事関係訴訟委員会の構想が固まり,今回の発足に至ったことなどが,事務局から説明された。
(6)委員会運営について
- 医事関係訴訟委員会規則の概要について,事務局から説明
- 議事の公開の取扱い
別添「議事公開の取扱いについて」(PDF:8KB)のとおりの取扱いとすることとされた。 - 委員会の事務手続
審議の結果,1)鑑定人候補者の選定に関しては,まだ試行段階であり,いきなり本格的な作業に入ることは困難であるので,秋以降,当面選定作業を行う事件は,鑑定人の確保に特に困難を極めているものを選別してもらうこと,2)基本的な選定方法は,別添「鑑定人候補者の選定手続について」のとおりとすること,3)選定方法については,今後も継続的に意見交換を重ねながら,柔軟に改めていくことなどが合意された。 - 今後のスケジュール(次回の予定)
(7)主な発言
- 委員会を通じて鑑定を頼まれることによって,鑑定人が得られやすくなり,また,鑑定の内容の質が向上することが期待できる。
- 最高裁の権威というよりは,むしろ,法曹界や医学界を代表する人々が集まった委員会で,適切な学会を選定し協力依頼をするというシステムを整備することによって,学会にもより誠実に応じていただけるのではないか。
- 現役の医師にとっては,鑑定というのは大変な労力を伴うもので,なかなか鑑定を行う暇がないという実情もあるが,医事関係訴訟の問題にどのように対応していくか真剣に考え始めた学会もある。この委員会で,医事関係訴訟の改善に,少しでも役に立てればと思っている。
- この委員会と学会の推薦依頼ルートだけでなく,個々の裁判体が学会にアクセスする機会も残しておくことはよいと思う。
- 医事関係訴訟が起こされる事案には,医師側と患者側のコミュニケーションが不足しているものが多い。この委員会を通じて,これからの医療の在り方についても考えていきたい。
- 医師と患者のコミュニケーションという点では,主治医が話したつもりでも患者には伝わっていないということもある。また,最近は医師が専門化しすぎていて,かえって弊害も起こっている。全体が見られる医師が増えてくれば,訴訟はもっと減るのではないか。
- 医療の世界は,一般的に情報量が少ない分野と思う。医療に患者側から見た透明性を求め,医療側と患者側がお互いに信頼できる良好な関係を作るお手伝いができればと思う。
- 医療事故が起きたときに,裁判のように責任をとるとらないの議論をするのとは別に,患者と臨床医,病理学者等がありのままを話し合って,事故が起きた原因を一緒になって考え,その結果を自分たちの子供や子孫に伝える機会があってもよいのではないかと考えている。
- 裁判も,結果が生じたから責任があるという考え方ではなくて,医療行為が行われたときの状況やその当時の医療水準を踏まえて,判断されるべきものである。
- 医療行為は,本質的にリスクと裏腹のものであると思う。例えば,新しい薬を開発することは医学の発展につながるが,その開発の過程には大きなリスクが伴うものである。それを承知でしなければならない面がある。
- リスクの大きい治療でも,それを行わなければ医学の進歩はないが,一方で患者は,リスクは好まず有効な結果だけを欲しいと考える。その意味で,医事関係訴訟は大変重たい訴訟であるとの感想を持っている。
- 鑑定は,非常に大変な時間とエネルギーを要する作業であるが,その苦労の割には,裁判にどのように生かされたのかどうかがはっきりしないところがある。鑑定人の努力が真に生かされるようになればありがたいと思う。この委員会が,それに貢献できるように尽力したい。
- 鑑定事項が医学的に見て不相当なものもあった。鑑定事項を決める段階から専門家が関与することも考えるべきである。
- この委員会ができたことによって,医事関係訴訟が迅速化されることを期待している。また,同訴訟を適正に解決するという観点では,争点整理や鑑定事項作成の段階から,医師に関与していただければありがたいと思っている。
- 日常的に臨床に従事する医師たちは,疾患がどうして起きたのか,治療がうまくいかなかった原因は何かなどを,医療行為が行われた時の状況に立って,学問的に必死に考えている。ところが,裁判は,医師に過失があったかなかったかにポイントが絞られ,すべて結果からものを言われる気がする。
- 医事関係訴訟では,鑑定にたどり着くまでの争点整理の段階が大変で,鑑定人を探すのが大変であり,さらに,候補者を見つけても鑑定を引き受けていただくのが大変である。経験的にも,鑑定人を選任されるまでに,非常に長期間を要した事案がある。したがって,このような委員会が設置されたことは朗報である。
- 医事関係訴訟では,鑑定人に不快感を与えないように証人尋問を工夫すべきである。通常の交互尋問を機械的に行うのは問題が多い。弁護士側の意識改革も重要である。患者側・医師側の弁護士がそれぞれ研修し,専門的知識等の向上に努めることも必要である。
- 医療に携わる者が,医事関係訴訟において,果たさなくてはならない役割をきちんと果たすことが,当該訴訟にとっても,医学界にとっても大変重要であると長年思っていたので,このような形で,鑑定人が選ばれ,鑑定手続についても鑑定人の意見が採り入れられるシステムができあがったことに大変喜んでいる。