トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第8回医事関係訴訟委員会・第6回鑑定人等候補者選定分科会議事要旨
1. 日時
平成15年2月3日(月)午後3時
2. 場所
最高裁判所中会議室(2階)
3. 出席者(敬称略)
委員
森 亘,大西勝也,鴨下重彦,川名尚,菊池信男,木下勝之,杉本恒明,橋元四郎平,平山正剛,武藤徹一郎,(黒川高秀,永井多惠子,山口武典は欠席)
特別委員
前川和彦,御手洗哲也(名川弘一は欠席)
オブザーバー
山名 学,角 隆博
事務局
園尾隆司,菅野雅之,舘内比佐志
4. 議事
(1)開会の宣言
(2)民事局長のあいさつ
(3)オブザーバー角隆博大阪地方裁判所判事の紹介及び自己紹介
(4)地域における医療界と法曹界との相互理解に向けての取組
事務局から以下のアないしエについて報告がなされた。
ア 「これからの医療訴訟」の配布報告
刊行物「これからの医療訴訟」を,これまで本委員会の鑑定人候補者推薦依頼に協力した医学の学会及び日本医学会の分科会に対し,送付した。
イ 厚生労働省課長通知の改正について
国立病院の医師等の鑑定料受領の可否について,厚生労働省,司法制度改革推進本部事務局,民事局の間で協議を重ねた結果,厚生労働省から,従来の取扱いを変更し,裁判所からの依頼に基づく鑑定書の作成は,国立病院医師等の附加職務には当たらず,鑑定料を受領することができるようになる旨の通知が発出された。
ウ 今年度の医療訴訟ガイダンス・医療訴訟連絡協議会の開催予定
別添「平成14年度医療訴訟ガイダンス,連絡協議会開催計画」(PDF:242KB)のとおり,平成14年度は,36の地方裁判所で,医療機関と裁判所,弁護士会等の意見交流の場として,医療訴訟ガイダンス又は医療訴訟連絡協議会の開催が予定されている。
エ 平成14年度「地域の実情に応じた弁護士との研究会」
平成14年10月から11月にかけて,6つの高等裁判所で,高等裁判所,地方裁判所の裁判官と弁護士が出席する「地域の実情に応じた民事訴訟の運営等に関する弁護士との研究会」が開催された。この研究会では,「医事関係訴訟において円滑に専門家の協力を得ることができる環境を整えるために,医療関係者と法曹関係者との間で行われる意見交換の在り方について」というテーマで裁判官と弁護士の意見交換が行われ,医療界と法曹界の相互理解の重要性について確認がされた。
((4)に関する主な発言)
- イに関連して,各裁判体からの専門家に対する個別の鑑定依頼は,鑑定人候補者が所属する医療機関の施設の長になされることになるのか。
※ 事務局から,依頼を受けた鑑定人候補者が希望すれば,施設の長に連絡することになるであろうとの説明がされた。 - 医療訴訟ガイダンスは,一つの庁で一回のみ実施するのか。
※ 事務局から,開催場所を変えて複数回開催される場合があること,平成14年度は初めて開催する庁が多数であったことが説明された。 - 医療訴訟ガイダンス,医療訴訟連絡協議会は,大変,面白い試みであると思うが,その場で出された意見を委員会に還元する予定はあるのか。
※ 事務局から,全国的に共通性の高いテーマは還元したいと考えており,また,本委員会で出された意見を踏まえて,更に各地域に還元したいと考えていることが説明がされた。 - 医療訴訟ガイダンス,医療訴訟連絡協議会で出された意見が,本委員会や各地域に還元されるのであれば,各地域ともやりがいがあるだろう。
- 医師と法曹界が一つのテーブルに着席して,一緒に話すだけでも十分な意味がある。
(5)推薦依頼をした事案の経過報告
本委員会で推薦依頼した事案について,事務局から,別添「医事関係訴訟委員会において推薦依頼をした事案の経過一覧表」(PDF:825KB)に基づいて経過報告がなされた。
((5)に関する主な発言)
- 推薦依頼を受けた学会からの回答はおおむね迅速である。
- 鑑定書の提出までの時間が著しく遅れる事案の数も減少している印象だ。
(6)推薦依頼について
ア 今回推薦依頼のあった事例13件について,別添「推薦依頼のあった事案等について」(PDF:19KB)のとおり,依頼先学会が選定された。
(アに関する主な発言)
- 鑑定事項が当事者本人に対する診察を前提とする場合,鑑定人による診察は可能なのか。
※ 事務局から,鑑定人が診察した上で鑑定を実施するケースもあり得ることが説明された。 - 当事者本人に対する診察が鑑定の前提となる場合,鑑定人が面と向かって診察をするのでは,鑑定を引き受けてもらうことが困難とならないか。鑑定人とは別の医師が診察をして診断書を作成する方法も考えられるのではないか。
イ 推薦依頼を受けたある学会から,今後,推薦依頼があった場合には,複数名の鑑定人候補者を推薦したいとの連絡があったことが事務局から紹介され,今後,本委員会で検討していくこととされた。
(イに関する主な発言)
- 複数名の候補者を推薦したいとする趣旨は,一人で鑑定を引き受けるのは負担が大きいので,複数名で協議していきたいということだと思う。
- 複数の鑑定人が協議するのではなく,鑑定人がそれぞれ鑑定書を裁判所に提出し,その中から裁判所が公正に判断すればよい。
- 鑑定をするのは,当事者双方の主張が対立しているためなのだから,裁判所としては鑑定意見が一つであることが必要なのではないか。複数の鑑定意見が出されたら,その中から一つの意見を選ぶために,また鑑定人が必要ということになりかねない。
- 複数の鑑定人がそれぞれ鑑定意見を出す方法でも,実際に意見が割れることは余りなく,むしろ同じ意見に達することが多いと思う。
- 多忙な複数の鑑定人が,それぞれ膨大な資料を読んだ上で,互いの日程を調整し,集まって協議して一つの意見をまとめるのは,実際には難しい面がある。
- 鑑定も,人間のやることである以上,1回1回の鑑定に完璧を期することはできない。だからこそ,訴訟には上級審があり,何段階かの裁判をして真相に近づけていこうとするのである。そうだとすれば,仲間に相談することがあっても,鑑定人になるのは一人の人間でいいのではないか。複数の鑑定というのは,筋が通っているように見えるが,間違っているのかも知れない。
- 複数鑑定には,鑑定事項が異なる専門分野に分かれるために協同して鑑定を行って一つの鑑定書を作成する場合と,複数の鑑定人がそれぞれ鑑定書を作成する場合とがある。前者の場合,誰かの補助を得ながら鑑定を行っても,鑑定人になるのは一人でも良いわけで,誰が鑑定人になるかという名前だけの問題だと思う。これに対して,後者の場合は,アメリカの訴訟であれば,原告側,被告側のそれぞれの医師が意見を述べる仕組みがあるが,日本ではまだそのような仕組みがないから,もしやるのであれば,新しい裁判上の試みとなるので,いろいろとテストをしないと評価ができず,現在はまだ端的に裁判所で採用する段階ではないと思う。
- 裁判のコストというものを考える必要がある。複数の鑑定人によりディスカッションがされれば,自然科学的に精度は高くなるだろうが,コストも高くなり,鑑定費用を当事者が負担する現在のシステムの下では,国民の側から見て,鑑定を利用しづらくなる。
- 自分の所属する学会では,鑑定人候補者推薦に向けてやっと積極的に動き出したところで,現時点では一人の候補者を選ぶだけでも大変なのが実情である。
- 複数の鑑定人を推薦するのは,将来のあるべき姿と思うが,私の関係する学会でも,1人の候補者を選ぶのに四苦八苦しているのが実情だ。ただ,複数の鑑定人候補者を推薦したいという学会からの申出は,素直に受けたらどうか。
(7)専門委員制度,新しい鑑定手続について
事務局から,1.民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱が2月上旬の法制審議会で決まり,本年の通常国会に提出される見通しであること,2.最高裁でも民事訴訟規則の改正準備作業が進められていることが紹介され,主要な改正点である専門委員制度の導入と鑑定手続の改善について説明がなされた。
(8)次回以降の委員会の予定,日程等
次回の委員会及び鑑定人等候補者選定分科会は平成15年4月17日(木)午前10時から正午までであることが告知され,次々回は同年6月ころに開催することが決定された。