1. 日時
平成17年3月4日(金)午後3時
2. 場所
最高裁判所中会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
秋山宏,上谷宏二,内田祥哉,尾崎行信,可部恒雄,仙田満,畑郁夫,平山善吉,松本光平,安岡正人(岡田恒男,鈴木誠は欠席)
特別委員
大森文彦,坂本功,関沢勝一,山口昭一,山本康弘
オブザーバー
斎藤賢吉,鴫原毅,齋藤隆,富田善範,田中敦
事務局
高橋利文,菅野雅之,小林宏司,花村良一
4. 議事
(1) 開会の宣言
(2) 配付資料の説明
「建築訴訟委員会答申(案)要旨」(資料1(PDF:29KB))について,前回の委員会において了承された答申項目(案)に基づき,事務局において作成したものである旨の説明がされた。
「鑑定人候補者推薦依頼一覧」(資料2(PDF:53KB))について,前回の委員会以降に新たにされた推薦依頼等を踏まえたものである旨の説明がされた。
「建築関係紛争の分類と対応」(資料3(PDF:229KB))について,従前示されたものに東京地裁において修正を加えたものである旨の説明がされた。
(3) 建築関係訴訟委員会答申(案)について
ア 「第1 はじめに」及び「第2 建築関係訴訟委員会の設置をはじめとする建築界と法曹界の連携に向けた取組」について
(主な発言)
なし
イ 「第3 建築紛争事件の現状と問題点」について
(ア) 「1 データから見た建築紛争事件の現状」及び「1(1) 建築に関する専門的知見を一層円滑に導入するために考慮すべき事項」について
(主な発言)
- 統計数値について,これまで建築界と法曹界で共同して取組みをしてきたことから,その取組み前と取組み後でどのように改善がなされたか(数値で)示せればいいと思うがどうか。
- 取組み前の数値も示すことができればよりよいが,建築に関する事件の統計を取り始めたのが,最近のことであり,比較すべき適切な過去の数値を示すことができない。よって,今回の答申では,平成16年の事件統計数値を紹介することに止めざるを得ないが,今後,統計を積み重ねていくことによって,将来的には,実情の推移を数値で示すことができよう。
- 平成11年の懇談会の頃から,そのようなデータはないとの説明を受けてきていた。これまでに例えば専門部をつくったりして改善を行ってきているので,審理期間が短くなってきていることは間違いないと思う。
- 鑑定人の選任において,その前提として争点整理が適切に行われることが不可欠であるとともに,鑑定事項の確定も重要であるのでそれについても触れて欲しい。
(イ) 「2(2) 調査審議中に議論された事項について」について
(主な発言)
- 裁判例としては,注文者側が無理な注文をして契約した場合と請負者側が契約違反を行った場合とは,それぞれ,どの程度の比率になっているか。
- そのような場合の比率については,把握していないが,発注者側が建築基準法に違反した契約だと知っていた場合には,その契約を無効として代金請求自体が認められなくなるという判断がされる事例は少ないと思う。このような場合には,瑕疵があるとは認定することができないという考え方と,建築基準法に違反すれば注文者の認識にかかわらず瑕疵を認めるとする考え方が,裁判実務においても争いとなっている。
- 発注者から無理難題をいわれても建築基準法に違反するような契約は結ばないという責任が建築専門家にはあると思う。
- そういった議論もあるし,建築専門家の説明義務の問題もある。
(ウ) 「3 建築紛争の原因と紛争解決・予防のための方策等」について
(主な発言)
- 契約前交渉の段階においては,見積書とともに,設計図書も重要である。
- きちんとした会社同士の紛争なら設計図書も重要になってくるが,設計図書が作成されない場合もたくさんあり,実際の紛争で,契約前交渉に関する証拠として重要となるのは多くの場合,見積書だと思う。
- この種の訴訟で一番問題となるのは瑕疵の有無についてであるが,その判断をするにあたり,見積書どおりに行われたのかどうかが重要となってくる。
- 建築紛争で,設計図書がないものは,たしか70~80パーセントあるようである。そのような場合,見積書の中のいろいろな仕様が設計の根拠の一つとなっているのではないか。
- 見積書の中に設計的な表現内容があるのだろう。
- 建築専門家に求められる「説明義務」とは,どの程度のものなのか。法的義務として,説明することを求められるということか。
- これまでの委員会及び分科会で指摘されてきたことは,契約書があるだけでは一般の人はその記載内容が分からないままに契約を締結してしまうので,契約締結の際にその契約内容を十分に分かってもらう必要がある,ということであり,現状において法律的な義務まで高められているという議論はされていない。
- 十分にわかりやすい説明をすることが重要だとしても,各段階において全部説明するのはかなり大変なことである。しかし,十分な説明をする方向へベクトルを向けることは大事なことである。説明の類型化ができたら,説明する内容を具体的に示すことができるが,今はできていないので説明の重要性を示す表現を使用するとよいと思う。
- 建築事件の現状として,医療事件のような説明義務違反による損害賠償請求という例はあまりない。
- 建築の場合,出来上がったものと発注者の当初イメージしていたものとが違っている場合があり,確認を怠っていると事件になりやすい。図面や積算を丁寧に説明する必要がある。
- 設計者に求められる説明義務と施工者に求められる説明義務とは違うというように,単純に「説明義務」と,一くくりにできない面もあることは,注意すべきであろう。
- 契約内容の認識の齟齬が紛争になる。例えば,見積書を見ただけではどのようなものができるか分からないので,こういうものができるということを説明する必要がある。
- 十分な説明を受けたとしても,実際に完成したものを使用してみると不具合があったりする。そのため,アドバイザー的な第三者機関が関与しサポートしないとなかなか難しい。
- 最近の住宅ハウスメーカーは,何段階かにわけて現場で説明をしている。そのようなコミュニケーションをとることにより,感情的な対立を防ぐことにもなる。説明は標準的な責務だと思うが,どこまで説明するかは難しい。
- 建築専門家とユーザーの間には専門知識のギャップがあり,それを埋めるためには,専門家側については十分な説明をすることが必要であり,ユーザー側にはサポートするアドバイザー等が必要である。
- 一般市民が利用できる建築に関する相談機関について,建築の設計,施工課程で第三者が関与すれば紛争予防にも役立つことになる。なお,例えば品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)には第三者機関が関与する制度もある。
ウ 「第4 最後に」について
(主な発言)
- 職業倫理に関し,本答申でも十分に言及してもらえれば,専門家の教育にも活用され得るのではないか。
- 建築界の取組として,日本建築学会内に倫理委員会を設置したことから,それについても触れてはどうか。
- 建築紛争は争う金額が多額であり,期間も長くかかるため,経済的にも精神的にもダメージが大きいものである。これらの点をアピールできればと思う。
- 経済的なダメージは,例えば個人と企業では異なると思うので,単純に金額の多寡だけで論じるのは誤解を生ずるおそれもあろう。建築関係訴訟の深刻性に関しては,何か別に適切な表現を工夫してはどうか。
(4) 今後のスケジュール
次回は,委員会兼分科会として,平成17年5月24日(火)午後3時から開催することが確認された。
(以上)