トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第3回医事関係訴訟委員会及び第1回鑑定人等候補者選定分科会議事要旨
1. 日時
平成14年1月16日(水)午後1時
2. 場所
最高裁判所中会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
森 亘,大西勝也,鴨下重彦,菊池信男,木下勝之,黒川高秀,杉本恒明,永井多惠子,橋元四郎平,平山正剛,武藤徹一郎,山口武典(川名 尚は欠席)
特別委員
名川弘一,前川和彦,御手洗哲也
オブザーバー
山名 学
事務局
千葉勝美,林 道晴
4. 議事
(1)開会の宣言
(2)名川特別委員,前川特別委員,御手洗特別委員の紹介及び自己紹介
(3)推薦依頼をした事案の経過報告等
懇談会で推薦依頼を行った事案7件と,推薦依頼事案番号(以下「事案番号」という。)平成13年第1号から第6号までについて経過が報告された。
(4)推薦を依頼する事案について討議
学会から適任者がいない旨の回答があったため推薦依頼先を再度検討した事案1件,前回委員会以降に緊急を要する事案として推薦依頼があり,事前に医学界関係の委員に推薦依頼先の学会の検討を要請していた事案6件,新規に依頼を受けた事案2件について,別添「推薦依頼のあった事案等について」(PDF:13KB)のとおり,依頼先学会が選定された。
(主な発言)
(5) 本委員会と分科会の運営の在り方について
ア 鑑定人等候補者選定分科会の設置目的の確認
鑑定人等候補者選定分科会(以下「分科会」という。)は,鑑定人等の候補者の選定を行うことを目的として設置されるものであることが,確認された。
イ 本委員会と分科会の役割分担についての確認
前回の委員会で決められた,1.本委員会と分科会は,当分の間,合同開催すること,2.将来的には,分科会は本委員会とは別個に開催され,分科会が鑑定人候補者の推薦を依頼する学会を選定する作業を行い,本委員会は,医事関係訴訟に関する基本的問題を論じるほか,分科会からの報告を受けることとすることが,再度確認された。
併せて,分科会をどのように運営していくか具体的な内容は,いまだ白紙の状態であるため,今後,詰めて行くべきであるとの提案がされた。
(主な発言)
- 鑑定人選任手続が円滑に行われるためには,各学会に鑑定人候補者推薦のための組織が設置されることが理想であり,そのための働きかけを行っているのか。
※ これに対して,事務局から,鑑定人候補者の推薦依頼があった際など,きっかけがあれば説明に伺ったりしていること,幾つかの学会では,鑑定人候補者を推薦するための組織を設置いただいたと聴いているとの説明がされた。
また,日本医学会会長から,所属の学会に対して,強制ではなく,自主的に学会内に鑑定人候補者推薦の組織を設置するよう協力依頼をしていることが紹介された。そして,例えば,日本産科婦人科学会では,この日本医学会会長からの依頼を重く受け止め,積極的に協力することを決定されたことが紹介された。 - 平成13年12月20日に東京地方裁判所で開催された「医療機関,弁護士会及び裁判所との協議会」のような会議の開催の協力を学会にお願いすることはよいことであるし,このような協議会や本委員会の雰囲気を各学会に伝えることも,我々の役目であると考える。
- 日本医学会会長からの協力依頼は,日本医学会に属する96の学会に限って行われたものであるのか。
※ これに対して,日本医学会に属する96の学会以外の学会に対しても,必要に応じて協力依頼が行われているとの説明が,日本医学会会長よりなされた。
また,日本脳卒中学会に対しても,日本医学会会長からの協力依頼をいただきたいとの要望が出された。 - 緊急を要する事案とは,どのような事案であるのか。
※ これに対して,事務局から,既に相当の時間を空費してしまい,事件当事者に,これ以上期間を待っていただけない事案であるとの説明がされた。 - 今後,「緊急を要する」事案が寄せられた場合には,委員長と特別委員の方とで相談して,対応を考えることとしてはどうか。
- 将来を考えるときには,学会内部に,鑑定人候補者を選任する組織が設けられることが必要であり,このような組織を設置することができれば,学会では若い医師等を活用することが期待できる。そこで,学会に組織を設置してもらうための努力をしていくことが必要である。しかし他方で,学会に推薦依頼をしただけで済ませるのではなく,学会に鑑定人候補者推薦の依頼をした後のコミュニケーションが必要である。鑑定人候補者の推薦が終わった後,学会への報告が必要であろう。このようなコミュニケーションをとっていれば,学会の会長が替わったときでも,協力体制は継続していくことになる。
- 代理人弁護士へのフィードバックという点は考慮する必要がないのか。
※ これに対して,事務局から,現在,幾つかの裁判所では,弁護士も含めて,専門家との地域でのネットワーク作りを始めたところであるとの説明がされた。
(6) 地域における医療機関と裁判所とのネットワーク作りについて
ア 全国状況の説明
東京地方裁判所,千葉地方裁判所,山口地方裁判所及び徳島地方裁判所で,医療機関,弁護士と裁判所との協議会が開催されていることが紹介された。
イ 東京地方裁判所で開催された協議会の紹介
オブザーバーから,平成13年12月20日に東京地方裁判所で開催された「医療機関,弁護士会及び裁判所との協議会」で出された意見等について,次のような紹介がされた。
- 以前に鑑定人をして非常に嫌な思いをしたが,現在は相当変わったという感じを持っている。
- 裁判所は,専門訴訟の運用改善に対する取組について,もっとPRしてもよいのではないか。
- 学会でも,専門訴訟の現状について知識を入手したいと考えて,裁判所に講師派遣を依頼したところ,断られたことがあった。学会の総会等で,裁判所側が,医事関係訴訟の現状等を説明するような機会を持つべきではないか。
- 東京地方裁判所での協議会については,開催の仕方についてなお検討を要するが,今後も,継続していくことで合意された。
- 医師側からは手術の見学について快諾をいただき,裁判所からは訴訟の実情について学会で講演することが合意された。
- 事務局から,地域における医療機関と裁判所とのネットワーク作りの今後の動きについては,随時紹介したい旨の説明がされた。
(主な発言)
- 東京地方裁判所で開催された「医療機関,弁護士会及び裁判所との協議会」のような協議会を開催することは,画期的なことである。裁判所や弁護士会から,このような協議会等の話があれば,学会に伝えていただければよいと思う。各地でそのような話が持ち上がれば役立つものと考える。
- 医事関係訴訟に関心を持っている人は多いが,鑑定について関心を持っている人は少ないと思われるが,医療訴訟ガイダンスで,鑑定の話をどの程度するのか。
※ これに対して,事務局から,医事関係訴訟の話があれば,当然,鑑定にも話題は及ぶことになると思われるとの説明がされた。
ウ 事務局から,医療訴訟ガイダンスの開催状況の報告,鑑定人CD-ROMの完成と活用について説明がされた。
(7) 法制審議会民事・人事訴訟法部会の第3回会合の審議の報告と意見交換
法制審議会民事・人事訴訟法部会の第3回会合の審議内容のうち,特に,専門委員制度,新しい鑑定人尋問の在り方について報告された。
(主な発言)
- 別添「民事事件における新しい鑑定手続のイメージ」(PDF:1.6MB)第3の注1に記載の協議を行う主体は誰であるか。
※ これに対して,事務局から,現行手続では裁判所と当事者のみであるが,制度改正をして専門家も参加できるようにしたいと考えている旨の説明がされた。 - 鑑定人1日裁判官になってもらうような制度はできないのか,鑑定人が少なくとも法廷に立つときには,それなりの身分,立場を与えることが必要ではないか。
※ これに対して,事務局から,専門訴訟において,訴訟手続に参加して,裁判官をサポートする地位に就く者として「専門委員」という制度が検討されていること,また,今後も,裁判手続における専門家の地位については,検討して行きたいとの説明がされた。 - 専門委員にそのような権限を与えるのであれば,「専門委員」というより,「裁判員」という名称の方がよいのではないか。
※ これに対して,事務局から,「裁判員」という表記は,現在,刑事訴訟を念頭に置いて用いられていること,また,専門家であることを強調したいことから用いず,専門委員という名称にしているとの説明がされた。 - 専門委員は,非常勤ではあるが裁判所の職員の身分を持つことから,証人や鑑定人とは身分は異なり,裁判所側の立場に立つことになり,場合によっては法壇にも登ることになるのであろう。裁判官が紛争の内容が分からないときに,アドバイスをもらえる方が身近にいるのは助かることになる。専門委員に評決権を認めるか否かにかかわらず,その意見は裁判上,非常に尊重されるであろう。
- 専門委員制度は大変良いことであると思う。しかし,専門委員をどう選ぶのかが問題であり,鑑定人を選ぶより難しいであろう。そのような具体的な問題をクリアーする必要があろう。
※ これに対して,事務局から,専門委員の名簿をどのように作成するかが問題であり,できれば,この医事関係訴訟委員会で,その名簿を作っていただけないかと思っているとの説明がされた。 - 別添「民事事件における新しい鑑定手続のイメージ」(PDF:1.6MB)の注3に鑑定事項決定についての記載があるが,鑑定事項が適切かということが適切な鑑定人を選ぶ鍵になる。そこで,鑑定事項決定の段階から,専門家が関与することが必要である。
※ これに対して,事務局から,専門委員が選任されている場合には,争点整理から訴訟手続に関与できるので,鑑定がされるときには,鑑定事項の決定についても意見を述べることになろうとの説明がされた。
(8) 東京地方裁判所医療集中部における取組等の報告
ア 時間の都合で,次回の議題とすることになった。
イ 事務局から,医事関係訴訟の実情を知っていただくために,委員の方々から御希望があれば,訴訟記録の閲覧,法廷傍聴,模擬訴訟を撮影したビデオの映写等も行っていきたい旨の説明がされた。
(9) 事務局からのお知らせ
最高裁判所ホームページに,医事関係訴訟委員会に関する記事の掲載を開始したことの報告がされた。
(10) 次回以降の委員会の日程確認等
次回(第4回) ~3月6日(水)午後3時から午後5時まで 最高裁判所大会議室
次々回(第5回)~5月開催で日程調整を行うことが確認された。