1. 日時
平成14年5月21日(火)午後2時
2. 場所
最高裁判所中会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
平山善吉
特別委員
大森文彦,坂本功,山口昭一,山本康弘(和田章は欠席)
オブザーバー
工藤光悦,齋藤隆,田中敦(斎藤賢吉は欠席)
事務局
林道晴,菅野雅之
4. 議事
(1) 開会あいさつ
(2) 配付資料の説明
(主な発言)
「鑑定人候補者推薦依頼一覧(建築関係)」(資料1)(PDF:49KB)について
- 司法支援建築会議では,これまで推薦を行った鑑定人候補者に対してアンケートを実施するなどして,蓄積された鑑定事例に関するデータを今後どのように活用し何を行っていくべきか現在検討中であり,今後はこれに関するレポートを提出したいと考えている。
- 本委員会を通じて推薦がされた事件について,鑑定結果等を有効活用できるような方策を,今後事務局においても検討する。
(3) 建築契約における書面の重要性(検討項目1)について
東京地方裁判所及び大阪地方裁判所から,建築契約において書面を作成していないことが,訴訟でどのように問題となっているかについて事例の紹介等があった。また,特別委員から約款等の整備状況(どのような約款が存在するのか,その利用状況,今後の方向性等)についての紹介がされた。次に,これまでにされた議論を事務局において整理した「『建築契約における書面の重要性』に関する検討項目(案)」(資料2)(PDF:16KB)に基づいて審議がされた。また,契約書の内容や添付すべき書面等の重要性が指摘され,次回以降継続して論点整理を行うこととされた。
(主な発言)
- 法や制度にのっとった建築を行わない者に対しては罰則を与えるなどのペナルティを科す必要がある。違法建築は,もはや紛争当事者間にとどまる問題ではなく社会に対しても悪影響があり,建築士法の諸規定に副った運用が図られるべきである。
- 実際の裁判の現場においては,例えば,違法建築の合意があった建物についても建築基準法に適合しているかを判断し,違法な建築に関与した専門家の責任を問う必要も出てくるのではないか。
- 施主の方が無理な注文をする場合もあるから,施主側と工事を請け負う業者側との間の橋渡しをするアドバイザー制度を充実していく必要がある。
- 書面の重要性のほか,保険の重要性も考える必要がある。発注者をどう救うかが大切で,仮に建物に瑕疵があった場合,専門家である保険会社がまず発注者の損害を補填し,その上で本人に代わって訴訟をすればよい。
- 施工に関する請負契約の内容が問題となっている訴訟では,融資を受けるに当たり金融機関から契約書の添付を求められることがあるので,契約書が全くないというケースは少ない。しかし,契約書があってもその条項が簡単であったり,図面がなかったり,仕様等は別紙のとおりとあるのに別紙の添付がないなどの不備を伴っており,契約書の有無というよりも,図面や仕様書がないことが問題となることが多い。
- 約款では,設計図書を添付することを前提としている。設計図書とは図面と仕様書をいうが,設計図書さえ存在すればトラブルはかなり減少すると思われる。これに加えて代金内訳書があることが理想的であるが,現実には難しい面がある。
- 戸建ての場合,基本設計の図面が存在し,下地と仕上げの条件だけ分かれば,実施設計や詳細な工事図面がなくても何とか工事できることもあるし,設計図書の作成にも費用がかかることから,実際には坪いくらとだけ定めて進めてしまうことが多いのではないかと思われるが,それが問題である。
- 実際に訴訟になるケースでは,追加工事や変更工事に関しては,契約書が一切存在しないケースが多く見受けられる。口頭による契約の成否及びその内容の認定に困難を伴う。
- 契約書には,図面と仕様書を添付する慣行作りを考える必要がある。そのために,例えば,書類の不備を建築裁判の事実認定における経験則に反映させ,契約の成立を認定できないとすることも考えられないか。
(4) 検討項目2以下について
次回分科会において,東京及び大阪の各地方裁判所から設計及び監理に重点を置いた事例分析について,特別委員から教育及び人材育成の観点(アメリカにおけるサイエンティフィック・ローヤーの実情など),説明義務の在り方について,それぞれ報告を受けることとし,また,設計・監理にポイントを置いて,検討項目5までについて継続審議することとなった。
(主な発言)
- 将来的には,一級建築士でフォローできない部分の補強のための人材育成が必要となってくると考えられる。我が国でもアメリカのサイエンティフィック・ローヤーのような制度は考えられないか。
- ビル物は工事監理がしっかりしているが,戸建ては工事監理が行われていないことが多い。ビルか戸建てかで区別して議論すべきではないか。
- 施工は,一応契約書があることが多いということであるが,設計・監理では全くない場合がある。設計では,一応の成果物があるが,交渉が途中で決裂したためそもそも契約が成立したかどうかが問題となることがある。また,監理では,具体的にどこまで監理すべき義務を負うかが問題となることがある。
- 最近は,建物の竣工の前後に,10ないし20万円を専門家に支払って建物のチェックをしてもらう場合があるようであるが,この契約の性質はどのように考えるのか,監理といえるか。これから問題となる事例が増えてくるように思われる。
(5) 今後のスケジュール
第5回分科会は平成14年7月19日(金)午後2時から,第6回分科会は第4回本委員会(平成14年9月18日(水)午後3時から)と合同で開催することが確認された。