トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第26回医事関係訴訟委員会・第24回鑑定人等候補者選定分科会議事要旨
1. 日時
平成26年3月10日(月)午後3時
2. 場所
最高裁判所中会議室(2階)
3. 出席者(敬称略)
委員
武藤徹一郎(委員長),永井良三(委員長代理),新井一,五十嵐隆,小川聡,北山元章,木下勝之,髙本眞一,寺本民生,中村耕三,吉岡桂輔[吉村泰典は欠席]
オブザーバー
廣谷章雄(東京地裁判事),中村也寸志(大阪地裁判事)
事務局
永野厚郎(民事局長),岡崎克彦(民事局第一課長),福田千恵子(民事局第二課長)
4. 議事
(1) 開会の宣言
(2) 鑑定人候補者推薦依頼事務の御報告
事務局から,本委員会から各学会に対して鑑定人の推薦依頼をした事案について,別添「医事関係訴訟委員会において推薦依頼をした事案の経過一覧表(平成23年以降のもの)」(PDF:71KB)に基づき経過報告があり,また,前回の報告後,委員会開催日までに推薦依頼をした事案について,別添「推薦依頼のあった事案の概要等」(PDF:155KB)のとおり,推薦依頼先学会が選定された旨の報告があった。
(3) 医療訴訟連絡協議会・医事関係訴訟事件の状況等について
ア 医療訴訟連絡協議会等の開催結果の報告
事務局から,各地方裁判所において開催されている医療訴訟連絡協議会や医療訴訟ガイダンスなどの,医療の専門家と法曹関係者の意見交換の取組につき,平成25年度の開催結果について,報告があった。
イ 平成25年(1月~12月)の医事関係訴訟事件統計について
事務局から,平成25年(1月~12月)の医事関係訴訟事件の最新の動向について説明があった。
(主な発言)
- 鑑定人候補者推薦依頼事務に関して,各学会には非常に良く協力していただいていると思う。事案についても,全体的に複雑な事案が増えているように思うが,適切に推薦をしていただいている。
(4) 意見交換「院内事故調査報告書について」
ア 趣旨説明
近時,医療訴訟において,院内事故調査報告書が証拠として提出される例が見受けられる。しかし,院内事故調査報告書には,中立性・公平性が担保されているかという点,調査内容の程度に差があるという点,原因究明と再発防止を目的とするものであって,法的責任の有無を判断することを目的としているのではないという点など,証拠価値の判断において問題となり得る点も少なくないと思われる。
そこで,医療訴訟において院内事故調査報告書を適切に証拠評価するために,各医療機関で実施されている院内事故調査の実情等について意見交換を行うこととした。
イ 訴訟における院内事故調査報告書の実情
東京地裁,大阪地裁から,訴訟における院内事故調査報告書に関する証拠提出の実情等について,説明があった。
ウ 意見交換
以上の説明を踏まえて,主に,外部委員の有無,弁護士関与の有無といった院内事故調査委員会の構成の点,遺族からの聞き取りの有無といった事実調査の程度・方法の点,作成された報告書を遺族に交付しているかといった点について,意見交換を行った。
(主な発言)
- 院内事故調査委員会の問題点は,実際に関与した者を外すため,委員会の中にその分野の専門家がいなくなる点である。また,内部だけで事故調査を行うと,外からの見え方として中立性に問題が生じるので,院内調査には外部委員を入れるべきだと思う。なお,外部委員を入れたとしても,内部委員主導で形式だけのものになってしまっては意味がないので,外部委員を入れて,かつ外部委員主導で行うことが必要である。
- 実際,訴訟に報告書が書証として提出されることが少ないようであるが,それは,適切な外部委員を確保することが難しく,充実した報告書を作成するのが難しいためであると思う。
- 死亡事案から軽微な事案まで事案の程度が様々なので,全てに外部委員を入れる必要があるわけではないと思う。診療科の責任者としては,何が起こったかを把握する必要があり,事故直後の状況の備忘のため,事実関係の整理は通常早急に行っているはずである。死亡事案や重大な障害が生じた事案には外部委員を入れるなど,事案に応じたランク付けをしていくことが必要である。
- 外部委員が入っているからといって,それだけで直ちに透明性が確保されているということにはならない。最終的には,ケース毎にきちんと報告書の内容を評価していく必要があると思う。
- 通常の場合,病院側の弁護士と相談しながら報告書をまとめており,外部委員として弁護士委員を入れることはあまりない。
- 調査に当たって遺族からの聞き取りを実施するか否かについては,事実関係の確認の要否によって異なっており,事実を明確にする必要がある場合にのみ行っている。
- 当院の場合,裁判になる事例を把握するのは,遺族からの相談が事務局にあり,事務局から報告が上がってくることがきっかけになることが多い。事務局がその時点で遺族の話を詳細に聴取していることが多く,結果として,ある程度詳細にまとまったものが出来上がっている。
- 補償を考える必要がある場合や訴訟になる可能性がある場合などには,病院側から積極的に報告書を交付し,面談するなどして説明をしている。
- 患者側に不信感を持たれているときなどには,きちんとここまで調査・議論をしているということを示すことで患者側からの納得を得られることがあるので,そういった形で報告書を利用することもある。
- 当院では,院内事故報告書はオープンにすることを前提に作成しているので,言葉の使い方には気を使っている。例えば,医療側は「~すべきであった」という言葉を,限られた時点で最善のことをすべきであるという意味で用いており,過失に直結する意味では用いていないが,その点に法曹界との認識のズレがまだあるように思われる。
- 報告書のうち,少なくとも「事実経過」に関する部分は,争点整理の道具として積極的に活用すべきであると思っている。報告書に書かれた物語をたたき台として,その当否について議論を交わす方が効率的であり,必要があれば改めて調査や鑑定をすればよいと思う。そのような点から,なぜ訴訟にあまり提出されていないのか疑問に思っている。
- 大きな医療事故であれば,院内でそれなりの対処をするのが病院としての当然の責務で,病院の中で事故の位置付けや対処について院内で必ず議論されているはずである。その結果を参考にするだけでもよいので,それを利用してもらわないと,院内事故調査という制度自体が育たないと思う。
- 院内事故調査委員会の目的は,原因究明と再発防止であって,訴訟を想定しているわけではない。責任の有無のために作成されているものではないので,裁判で利用するときは,その点を考慮して利用する必要がある。
(5) 次回の予定等について
来年度については,適切なテーマがある場合のみ意見交換会を開催することとし,開催しない場合は,本委員会1回のみとすることが確認された。