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(司法制度改革審議会意見)
評価に当たっては,例えば自己評価書を作成させるなど,本人の意向を汲み取る適切な方法,更に,裁判所内部のみではなく裁判所外部の見方に配慮しうるような適切な方法を検討すべきである。
1. 「本人の意向を汲み取る適切な方法」について
審議での各委員の意見
吉岡委員(議事録56回13頁)
一般の企業社会でもそうですけれども,人事評価は上司がして,それを上に上げていって評価されるという制度は,だんだん崩れていると思っております。上司も評価しますけれども,同僚も評価する。勿論,自己評価もするという,そういうものを併せて,あなたはこういう評価だということを伝えて,それに対して本人に不服があれば,不服を言わせるというのが一般的な企業社会になっているように私は思っておりますので,むしろそちらの方が一般的だということを申し上げたかったんです。
2. 「裁判所外部の見方に配慮しうるような適切な方法」について
審議での各委員の意見
高木委員(平成13年2月13日「裁判官制度の改革」に関する意見7頁)
独立を害さないように,裁判官の主職務である法廷活動を評価するには,外部評価が重要である。裁判所内部で,他の者が法廷を見ることなく,判決を見る機会も限られていると思われる。また,内部者が判決内容を評価の対象とすれば,裁判官の独立を侵害することとなる。すべての裁判官に対し,検察官や弁護士等による外部評価を一定期間ごとに行うことによって,内部評価とあわせて評価を行う。反論・不服申立の資料となり,裁判官推薦委員会の基礎資料となる。
水原委員(議事録56回13頁)
裁判所外部の者の意見,評価も,併せて聞く必要があるのではないかという気がいたします。その裁判所外部の意見というのは,法律専門職でございますので,一番接することが多いのは検察庁と弁護士会の人たちの意見を聞くことだろうと思います。それはどういう形になるかはともかくとして,検察庁のその裁判官に対する評価,弁護士会のその裁判官に対する評価,これも部の総括の意見と併せて最高裁に送る。
吉岡委員(議事録56回14頁)
利用者の声が反映できるということが,要素としては非常に重要ではないかと思います。直接の部総括裁判官ですから,勿論,評価をする人の中には入らなければいけないでしょうけれども,それ以外の関係者と言いますか,法曹関係者,それから利用したことがある人たち,これは勝った負けたに関係なくですが,そういう人たちの声が反映されて決定していくという,そういうことは必要だと思います。第56回審議会配付資料「評価権者,評価のための判断資料,本人開示等に係る新たな仕組みの整備のための検討事項(レジュメ)」(PDF:59KB)中,ロ「評価のための判断資料の充実・明確化」のところには,「裁判所に対応する検察庁の長,弁護士会長の意見など」ということが書いてありますけれども,これはあくまでも意見を聞くという,判断資料の充実・明確化という範囲でしか書かれていません。そういうことではなくて,決定する仕組みの中に入れていくことが必要だと思います。アメリカの視察をしたときの制度はそういう制度になっていたと私は理解しているのですけれども,やはり民主的な組織の中での裁判官,裁判所を考えるときには,いかにして一般の国民の声を入れていくか,そういうことを考え,それが入っていると証明されるような組織をつくる必要があると思います。
山本委員(議事録56回16頁)
裁判官の評価に客観性を持たせるとか,あるいは裁判官の独立性を担保するというのは大事な議論ですけれども,内部による人事制度,それから外部の第三者による評価,それぞれ一長一短があると思うんです。一方のみに偏するのは決して良くないと思うんです。確かに,現在内部の制度による個々の裁判官の独立が損なわれているんじゃないかという議論があるのは分かりますが,だからと言って,外部の評価というのも,第三者とはいえ,同じような問題が出る可能性がある。そこでバランスと,事の中身をよく吟味した上で,分担を決めるという態度が必要ではないか。さっき吉岡さんが客観性を担保している証としてということを言われましたけれども,そこに大きなポイントがあるのではないかという気がするわけです。 裁判官の任命とか再任みたいな大きなイベント,これについてどう考えるかという問題でしたら,かなり外部の評価が入ってもおかしくはないし,あるいはそれに耐えられるのではないかと思うんですけれども,日常の人事考課とか,転勤とか,そういったことになりますと,どうしても外部の目ではうかがい知れないところがたくさんあるはずで,どうしても内部評価によらざるを得ないんじゃないか。裁判所といえども組織体ですので,組織を維持する,より良くするという組織の自治権と言いますか,そういったことも当然のことながら尊重されなければいけないわけです。余り短兵急に客観性だけを追い求めた結果,むしろ客観性が担保されず,かつ組織自体が非常に弱体化するということになってきますと,何のための外部による評価かということになるわけですので,そこは十分注意する必要があるんじゃないかと思います。
石井委員(議事録56回17頁)
外部の評価につきましては,これは考え方としては良いので賛成です。ただし,具体的にそういうことが実際にできるのかというのが心配です。外部の評価を無理してやろうと考え,できないものをやってみてもしかたがありませんが,それが本当にワークするようなことが考えられれば,考え方としては悪くはないと思います。最近,大学の先生を学生から見た評価というのが流行っていますが,そういうものとはいささか質が違いますので,外部評価が本当にできるようなシステムができるのかどうか,その方面から考えていって,本当に効果のあるようなものができるならやるというのも良いのではないでしょうか。海外でもなかなか導入されていないというのは,実際にうまくシステムがワークしないというところがネックになっているのではないかと私は感じております。
井上委員(議事録56回18頁)
私も,先ほど山本委員がおっしゃった意見に基本的には賛成でして,任命や再任の場合の評価なり情報の集め方,あるいは意見をどう求めるかという問題と,定常的に評価をしていくことは違うのではないかと思います。特に,後者の評価というのは何のためにやるのか。評価それ自体が目的ではなくて,今のような給与制度を取っている限りは昇給の問題と,水原委員がおっしゃった補職,これは任地を移るということを含めた意味だと思うのですけれども,そういうことのためにやるのだろうと思うのです。そして,そういう点になりますと,これは竹下代理が言われたことですけれども,裁判官の職権行使の独立の問題がありますので,そこに事件関係者を含めた外部の声を決定的な要素として入れるというのは,全く排除するまでのことはないかもしれませんけれども,やはり限界があるだろうという感じがするのです。
水原委員(議事録56回19頁)
私も一般の国民からの意見を聴すべしということを申し上げているのではございません。判事の任命,それから再任の際には,国民の声を聞くようなシステムを考えるべきだということは前に申しましたけれども,この人事評価に際しては,一般の方々からの意見を聴取するのは相当ではなかろうなという気がいたします。なぜ検察官,対象裁判官の所属する裁判所に対応する検察庁の責任者と言いましょうか,それから弁護士会の責任者,この方々の意見を聞いた方がいいかと言いますと,検察官は厳正公平,不偏不党ということが基本でございます。したがって,国民の代表者としていろいろな観点から物を見なければならないという立場にございます。弁護士会も,中坊委員がしょっちゅうおっしゃいますけれども,公益性が高く望まれるところである。そういうところで,個人的な意見ではなくて,公の立場からの公正な意見を述べていただく。その意見が拘束力を持つのではなくて,それは一つの法曹三者のうちの意見として申し上げる。そこで最高裁判所で御判断なさるとすべきだというのが私の申し上げたことであります。
北村委員(議事録56回20頁)
外部評価との関係なんですけれども,私は一人ひとりの裁判官の外部評価というものはできないだろうと思っていますが,裁判所全体の外部評価,今大学の外部評価というのも,大学にも自治があってということがありながら,外部評価というものを受け入れる方向に来ております。 同じように,裁判の独立ということもあるでしょうけれども,それに触れない範囲での外部評価というものが,全体としては必要だろうと考えているんです。
高木委員(議事録56回23頁)
使途を明定,限定,基準は客観的にオープンに,内部評価中心だけれども,外部評価によってチェックする仕組み,具体的に言いますと,最終的には最高裁の司法行政ということかもしれませんが,総合評価,最近は360度評価が一般に言われている時代ですから,一般の裁判官の人たちも代表が外部評価に加われるような仕組みは当然考えなければいけないんじゃないかと思います。
藤田委員(議事録56回24頁)
第三者評価については,事件の当事者が自分の事件処理の経験を通じて言うという場合には,菅原先生の調査にもありましたけれども,どうしても自分を勝たしてくれたか,負かされたかということが影響します。私も,こんなに明々白々,自分の方を勝たせるべきことがはっきりしている事件なのに,相手方を勝たしたのは,相手方当事者とつるんでいるに違いないということで罷免の訴追請求をされた経験がありますけれども,そういう主観的な立場から抜け出るということはなかなか難しいということです。それから,一般の市民の評価ですが,今日いただいた資料の中に新聞の,「裁判官,市民が採点」という横浜地裁の例が挙げてありますが,声が大きいかとか,小さくて聞こえにくいとか,入廷しておはようございますと挨拶したかどうかというような,大事なことだとは思いますけれども,やはり国民が裁判官に一番要求するものは,プロフェッショナルな裁判官として,迅速,適正に紛争を解決してくれるかどうかということだろうと思いますので,人事評価のかつての項目などは,これだけで足りるかどうかは別として,そういう点に重点を置いて評価しているんだろうと思います。
中坊委員(議事録56回25頁)
私としては自分自身が弁護士という法曹の一種ですけれども,ここで必要なことは,私たち専門家が独立の名の下に独善に終わっているんじゃないかという危惧ですね。これは私自身も,自分がその中におりながら,非常に痛切に感じるものでありますし,そういう点が今直されていかないといけない。だから,利用する立場からだというなら,まさにそういうものを外部的に,どう皆さんが利用される側が評価されるのかということが,しかも制度的に保障されていくということが,一番今,肝心なことではないかと思っています。
佐藤会長(議事録56回27頁)
最後に中坊委員がおっしゃったように,独善化の問題があるので,第三者評価は確かに難しいんです。難しいんですが,外部の評価というものも一つの参考として考えられてしかるべきではなかろうか。外部の意見と言っても,どこまで考えるのかということですけれども,先ほど水原委員は,検察の責任のある方,あるいは弁護士会の責任のある方からの意見を聞くということもあってもいいのではないかとおっしゃった。これは,中坊委員が先ほど独善化ということを考えなければいけないとおっしゃったことと関連しているかと思います。
竹下委員(議事録56回27頁)
全体として,今,会長がおまとめになったことに異論はございませんが,ただ外部評価については,必ずしも意見が一致したとは言えないのではないかと思います。
佐藤会長(議事録56回27頁)
水原委員がおっしゃったような,検察あるいは弁護士会のそれについてもですか。
竹下委員(議事録56回27頁)
それは先ほど藤田委員が紹介されたように,今日の新聞の記事にあったように,弁護士会などが自主的におやりになって発表するということは,これは結構だと思いますけれども,裁判官の人事評価制度というものをつくるという場合に,その仕組みの中に外部評価を取り入れてくるということについては,私はやはり疑問があると思います。他にもそういう御意見もあったので,私一人ではありませんから,まとめとしてそれを入れられるのはどうかと思います。
佐藤会長(議事録56回27頁)
外部評価が全く不要というところまで代理はおっしゃるわけですか。むしろしてはいけないと。
北村委員(議事録56回27頁)
言葉が錯綜しているような感じがするんです。外部評価と言いましても,個々の裁判官の一人ひとりの人事評価ではないという意味で,私は使ったわけなんです。だから,一人ひとりのものをやっていくというのは,やはり私は裁判所の中で,基準が明確になって,髙木委員がおっしゃっていたように,それをどういうふうに使うかということが明確になっていればいいのではないかなと思っています。
中坊委員(議事録56回28頁)
既に弁護士会でも個々の綱紀・懲戒事案で,我々は弁護士会内部で決めると言っておったのが,今おっしゃるように外部の委員が入ってきて,個々の事案について,懲戒するかどうかについて外部の意見を聞こうというふうに弁護士会も変わってきているわけですから,内部で我々は独立だから,あるいは人事だから,懲戒はまさに人事そのものですけれども,そういうものについて外部の意見を聞かないというやり方は,弁護士会もかつてはそのとおりでした。それが今言うように,弁護士会の運営にも,既にこの委員会で外部委員が入ってくるべきだということで意見を決めたわけですから,そこはやはり今の我々の全体の司法の機関に対する利用する国民の側からのチェックという形で何らかの,そこを具体的に今おっしゃるようにどうするか非常に難しいところではあるけれども,その方向性そのものは尊重していかないといかない。そうならば,弁護士会が内部だけでやりますと言ったら,これは収拾のつかないことになるんで。
佐藤会長(議事録56回28頁)
こういうように申し上げるのはいかがでしょうか。裁判官についても苦情問題というのはあるはずなんです。これは弁護士にも勿論あります。苦情処理の問題は,アメリカの場合も独自に苦労していろいろなことをやっているようですけれども。これまでは余りそこがしっかりしないものだから,みんな訴追委員会の方へ行っているようです。訴追委員会は,本来もっと重大な問題を扱うべきところだと思うのですが,そこへ行っている感じがあるんです。ですから,この苦情処理の問題をどうするかという問題は考えざるを得ないと思います。今ここで立ち行って議論するということではありませんけれども。ただ,裁判官の独立ということを大前提にして,そして,そういう苦情の問題をどう処理するかということは考えてみる余地がありはしまいか。第三者評価,外部評価というと,北村委員がおっしゃいましたように,言葉だけが走りがちで具合が悪いんですけれども,純然たる内部だけでというよりも,何らかのそういうものがあるんではないか。仕組みについてここで具体的にどうだということは自信がありませんけれども,そういうものを念頭に置くということは代理も否定されないんじゃないですか。
竹下委員(議事録56回28頁)
裁判官の執務についての不服は,現に裁判所法82条で司法行政権の作用として,監督権によりこれを処分すると認められているわけです。ですから,ちょっと問題が違うと思いますし,中坊委員が言われた懲戒・綱紀の問題は,裁判官で言えば訴追・弾劾の問題であって,これは始めから訴追機関,弾劾機関の構成員として裁判官は入っていないわけです。すべて国会議員で構成されているのであり,それと比較しても弁護士会も外部の意見を入れることになったのだから,裁判所の人事評価についても,外部の意見も入れてもよいというのは,私は問題が違うと思います。
藤田委員(議事録56回29頁)
人事評価制度や,本人開示の制度的な在り方という点について,国民の意見を入れるのは当然のことだろうと思うんですが,裁判官の具体的な人事評価ということになりますと,これは先ほど申し上げたように,裁判官,あるいは裁判の独立ということに,どうしても影響せざるを得ないということがあります。会長が最初にちょっとおっしゃったように,弁護士とか大学教授から裁判官に採用する場合,これは裁判の独立とは関係ないんです。一方において判事補から判事に任官するとか,あるいは判事の再任ということになると,今までどういう裁判をしたかとか,有罪・無罪はどうだとかいう話になるでしょうから,どうしてもそういう点での影響というのが出てくる。だから,新規採用ならば,これは選考でも推薦でもいいんですけれども,そういう再任,あるいは判事補からの判事任官ということになると,一般的な諮問といいますか,以前に井上委員がおっしゃったように,どうしてもおかしい人を排除するという限度にとどめるのが適当で,一緒に議論すると混乱が生ずるのではないかという気がいたします。
吉岡委員(議事録56回29頁)
確かに訴追とか懲戒という問題と,一般的な評価とは違うとは思いますけれど,少なくとも任命するとき再任するとき,そういうときに国民というと幅が広過ぎるので,誤解されるかもしれませんが,やはり法曹三者ではない人の声を尊重していくということが,司法改革の中で求められている,国民が利用しやすい,期待できる,国民の視点に立ったという基本につながってくると思うのです。ですから,どういう形にするかは別として,国民の声が聞かれ,反映される仕組み,それが入れられていくことが必要だと思います。もう一つ,日常的な昇給とか昇進とか,それに国民がすべて関わるかということになると,そこまでは非常に分かりにくいと皆さんおっしゃるのは私も理解できます。考えなければいけないのは,さっき23段階に分かれているということでしたが,そんなに細かく分ける必要が,裁判官の場合にあるのかと。
山本委員(議事録56回29頁)
吉岡さんは,制度のチェックという日常的な問題についても,ある程度国民が参加できるようなものにしたらどうかということを言いたかったわけでしょう。
吉岡委員(議事録56回30頁)
そうでないと司法改革という基本から離れてしまうと思うのです。
山本委員(議事録56回30頁)
個別の評価それ自体ではなくて,評価システムのチェックに,裁判所だけではなくて,外部の人たちが参加するということは分かります。
井上委員(議事録56回30頁)
私も,日常的な評価のところに事件関係者を含む外部の声を,直接反映させるというのは,職務行使の独立との関係で,非常に微妙だと思うのです。ただ,先ほどおっしゃったような苦情がきているということが積み重なっていけば,それは当然内部の評価にも影響してくると思うのです。同じような苦情がくり返し来ていて,苦情というのはそれを反映させて改善していってもらう,自主的に改善してもらうという意味があると思うのですが,それが積み重なってきているということになれば,内部の評価にも当然影響せざるを得ない。そういう取り入れ方の方が望ましい,裁判官の独立との関係で言うとですね。
佐藤会長(議事録56回30頁)
ストレートに直結するかは相当問題があると思うんです。 休憩に入りたいと思いますが,ここは内部評価が中心になるということは,髙木委員もおっしゃいましたし,皆さん御異論ないわけですね。外部の声がどういうように反映されるかについては,ちょっと検討する必要があるということで,このところは一応のまとめとしたいと思います。まとめになっているかどうかは知りませんが・・・。
中坊委員(議事録56回30頁)
任命と再任の場合にそれが利用されるということは,先ほどから皆さんは御異論なかったんじゃないですか。それ以上に立ち入るということについては,外部の意見が入ってこないということはいけないでしょうけれども,少なくとも任命と再任のときには,それが入ってくる。
佐藤会長(議事録56回30頁)
出発点の構造と申し上げたのは,藤田委員も同意しておられます。
中坊委員(議事録56回30頁)
その意味では入っていたはずです。
竹下委員(議事録56回30頁)
それは私も異論はありません。
中坊委員(議事録56回30頁)
だれも異論なかったと思います。