トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第27回医事関係訴訟委員会・第25回鑑定人等候補者選定分科会議事要旨
1. 日時
平成27年3月16日(月)午後3時
2. 場所
最高裁判所中会議室(2階)
3. 出席者(敬称略)
委員
武藤徹一郎(委員長),永井良三(委員長代理),新井一,五十嵐隆,小川聡,北山元章,木下勝之,髙本眞一,中村耕三,吉岡桂輔[寺本民生及び吉村泰典は欠席]
オブザーバー
加藤正男(東京地裁判事),森冨義明(東京地裁判事),杉浦徳宏(大阪地裁判事)
事務局
菅野雅之(民事局長),福田千恵子(民事局第一課長),餘多分宏聡(民事局第二課長)
4. 議事
(1) 開会の宣言
(2) 鑑定人候補者推薦依頼事務の報告
事務局から,本委員会より各学会に対して鑑定人の推薦依頼をした事案について,別添「医事関係訴訟委員会において推薦依頼をした事案の経過一覧表(平成23年以降のもの)」(PDF:125KB)に基づき経過報告があり,また,前回の報告後,委員会開催日までに推薦依頼をした事案について,別添「推薦依頼のあった事案の概要等」(PDF:182KB)のとおり,推薦依頼先学会が選定された旨の報告があった。
(3) 医療訴訟連絡協議会・医事関係訴訟事件の状況等について
ア 医療訴訟連絡協議会等の開催結果の報告
事務局から,各地方裁判所において開催されている医療訴訟連絡協議会や医療訴訟ガイダンスなどの,医療の専門家と法曹関係者の意見交換の取組につき,平成26年度の開催結果について,報告があった。
イ 平成26年(1月~12月)の医事関係訴訟事件統計について
事務局から,平成26年(1月~12月)の医事関係訴訟事件の動向について説明があった。
(主な発言)
- 鑑定人候補者推薦依頼事務に関して,各学会には非常に良く協力していただいていると思う。事案についても,全体的に複雑な事案が増えているように思われ,一つの事案において,複数の学会に推薦依頼をする必要がある場合もあるが,各学会には,適切に推薦をしていただいている。
(4) 医事関係訴訟の最近の動向,審理の実情及び取組について
東京地裁,大阪地裁から,医事関係訴訟の最近の動向,鑑定,専門委員の活用状況及び医療界との相互理解を深めるための取組等について,説明があった。
(5) 意見交換
以上の説明を踏まえて,意見交換を行った。
(主な発言)
鑑定について
- カンファレンス鑑定は,医師からすると鑑定書を作成しなくてよいため,負担感が少なく,鑑定を引き受けやすいというメリットがある。
- 医師は,日常的に診療方針についてカンファレンスを行っているが,様々な意見が出て,一人では思い付かなかったようなより適当な方針が結論として出てくることがある。単独鑑定よりもカンファレンス鑑定の方が,それぞれの考え方の弱点を含めて吟味することになるため,より良い鑑定結果が得られるのではないか。
- 地方においては,一人の鑑定人を確保するだけでも大変であるとのことだが,単独鑑定として一人の医師に依頼するから,その責任を重く受け止め,引き受けてもらうのが難しいのではないか。カンファレンス鑑定を引き受けた医師(講師)から話を聞いたことがあるが,気分的にとても楽だったとのことであった。一人で全てを判断することは,相当な力量・経験がないと難しいことから,中堅どころの医師に依頼しても,単独鑑定の場合には,ほとんどの場合断られてしまうのではないか。一方で,カンファレンス鑑定により中堅どころの医師が3人程度集まれば,鑑定結果も安定するものと思われる。
- カンファレンス鑑定を引き受けている医師は,講師クラスが多いと聞いている。推薦依頼を受けた教授が,現場を知っていて,かつ,信頼ができる講師を推薦しているようである。鑑定の引き受け手としては講師クラスの医師が適当であると考える。
- 東京地裁のカンファレンス鑑定の創設期に携わったが,良い鑑定方式であると思う。単独鑑定の場合には,詳細に文献を読み込むなど,膨大なエネルギーを費やす必要があり,鑑定期間としても2,3か月かかってしまう。そのような労力からすれば,争点に対する結論を意見書として書いて提出し,裁判所において他の鑑定人とカンファレンスをするカンファレンス鑑定においては,短期間で要領良く鑑定を行うことができる。地域的な問題があるのは理解しているが,できれば,カンファレンス鑑定を全国に展開した方が良いのではないか。
- テレビ会議等を活用することも有用な方策であると思われる。
- 医事関係訴訟において,鑑定率が低下傾向にあるということだが,それが良いことなのかどうか。鑑定を実施しなくても判断のための材料が集まり,解決できることが多くなったとの話があったが,鑑定による医師の関与なしに法曹界だけで適切な判断ができるのか若干の疑問がある。
- 当事者双方の協力医の意見が,書証や証言として証拠化されることが多いとのことだが,協力医がどれくらいの専門性を持っているのか。科を標榜していても,診療科目が細分化されている現状において,果たして事案に対して必要な専門性を兼ね備えているのかどうか,よく吟味すべきではないか。
専門委員の活用と医療安全の取組について
- 裁判所としては,文献を読むよりも,専門委員である医師から直接説明を受けた方が理解が早いのではないか。
- 専門委員の中立性について,原告代理人が疑念を抱く場合があるという話があった。これは医師には隠ぺい体質があるのではとの疑念によるものだと思われるが,医療事故調査制度における第三者機関がうまく機能し始めれば,そういった疑念も払拭できるのではないか。
- 第三者機関が機能し始めれば,医師は第三者機関の評価結果を参考にして,日常の診療をしたり記録を残したりすることになると考えられるため,医療の透明性の確保に与える影響は大きいのではないか。
- 「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」が,全国10か所で行われているが,東京・大阪において多くの実施実績がある。第三者機関が関与したことにより,診療経過が明らかになって,医療機関が責任を認めて示談で終わった件もあった。
(6) 次回の予定等について
来年度については,適切なテーマがある場合のみ意見交換会を開催することとし,開催しない場合は,本委員会1回のみとすることが確認された。