1. 日時
平成14年3月5日(火)午後2時
2. 場所
最高裁判所大会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
猪口邦子,上谷宏二,内田祥哉,岡田恒男,尾崎行信,可部恒雄,鈴木誠,仙田満,畑郁夫,平山善吉,松本光平,村田麟太郎,安岡正人
特別委員
大森文彦,山本康弘,坂本功(山口昭一,和田章は欠席)
オブザーバー
工藤光悦,斎藤賢吉,齋藤隆,田中敦,田中信義
事務局
千葉勝美,林道晴,菅野雅之
4. 議事
(1) 開会の宣言
(2) 諮問について
事務局から,2月27日の最高裁判所裁判官会議で本委員会に対する諮問が決定され,その内容は別添「建築関係訴訟委員会諮問事項」(PDF:7KB)のとおりであることが説明された。
(3) 鑑定人及び調停委員候補者選任スキームについて
平山分科会長から建築訴訟委員会分科会(以下「分科会」という。)で鑑定人及び調停委員候補者選任スキームが別添「鑑定人及び調停委員候補者選任スキーム」(PDF:8KB)のとおり決定されたことが報告され,本委員会で了承された。なお,社団法人日本建築学会(司法支援建築会議)「等」とあるのは,日本建築学会以外の専門家団体と本委員会とのルートが開かれることを期待する趣旨であるが,現在,具体的な団体を想定しているわけではないとの説明が確認された。
(4) 鑑定人及び調停委員の選任後におけるバックアップ,事後フォロー
事務局から最高裁判所作成の「専門調停の手引」及び「鑑定人CD-ROM」が紹介され,東京地方裁判所から建築鑑定を行う建築家のための参考資料(大阪地方裁判所と協議して作成したもの)が紹介された。
(5) 建築関係紛争の原因分析
1)平山分科会長から2002年度の司法支援建築会議の事業計画について説明がされた。
2)東京地方裁判所田中部長から,東京地方裁判所建築集中部の事件処理状況及び建築関係事件の調査分析結果について説明がなされた。
3)大阪地方裁判所田中部長から,大阪地方裁判所建築集中部の事件処理状況及び建築関係事件の調査分析結果について説明がされた。
4)この問題については,引き続き分科会で審議をすることとされた。
(主な発言)
- 東京地方裁判所では,事件が訴訟から調停に付された場合,建築士の委員に任せてしまうのではなく,裁判官,建築士委員及び弁護士委員で事件の節目はもとより必要に応じて,随時,評議をし,現地に裁判官もできるだけ行っている。建築士の委員だけに負担が集中しないように,また,法的判断との整合性に留意して調停運営を行うようにしている。
- 大阪と東京の違いは,大阪では,施主からの損害賠償が多く,法律構成も不法行為によるものが多い。また,構造,用途では,木造や戸建てが多く,マンションが少ない。
- 大阪地方裁判所での調停の進め方については,第1回期日前に事前評議をし,当事者が争点整理を希望している場合には,裁判官が立ち会い,当事者が調整を希望している場合には,裁判官は手続の節目だけ立ち会っている。現地検分には,裁判官が立ち会わないとその後の説得の迫力が違ってくるので,なるべく裁判官が立ち会っている。
- 調停手続での事件の処理は,スムーズに行われている。判決の場合,平成12年の調査結果では,東京では第一審で30.2か月かかり,更に上訴もある。調停では,今回の分析結果では約21か月であり,しかも,上訴がない。
(6) 建築契約における書面の重要性に関する検討
平山分科会長から分科会での議論の経過が報告され,事務局から「書面が存在しないことや書面の不備を原因とする紛争の類型と改善のポイント(中間報告)」(PDF:28KB)について説明がされた。
この問題については,分科会で更なる審議をすることとされた。
(主な発言)
- 今の文化を変えて,書面主義の慣行を作っていくためには,手本を示していく必要がある。この問題は,インターネットが起爆剤になると思う。インターネット上に典型的な雛形を示して,だれでもアクセスできるようにするべきである。専門家も一般人の意識の向上に対応するため,よりレベルアップすることになろう。
- 書面というとき,文書と図面が入ることは,間違いないが,口頭で指示をしたものを音声で記録したものや,メールなどの電子情報が,後で証拠としてどのように機能するのかという問題がある。ある事実を立証する場合,どのような媒体で,どのような形で残っていればよいのか検討する必要がある。
- 書面の内容を理解できずに判を押してしまったような場合はどうなるかなど,認識の度合いというものも考える必要がある。
- 書面について,問題のある事例を検討するだけでなく,問題の生じていない事例についても,どのようにしてうまくいったのかということも検討した方がよい。
- 専門的知識に詳しい方又は経済的な強者が,契約約款等を含めて,書面を作成し,相手方は,十分な理解なしに署名してしまって,紛争になっている。書面はできているけれども,業者に有利になっていることが多い。,書面を解釈する際には,そのような状況を念頭におくべきである。
- 書面を作成しろと言えば,書面は作成されるかもしれないが,合意された事項がきちんと表現されているかどうかを,発注者は理解することができない。図面についても,その図面によって正確に空間を認識することはできない。したがって,書面化しても,紛争の解決にならない場合もある。説明をしっかりして,発注者と建築家が,いかにイメージを一致させるかというコミュニケーションのテクニックが必要である。
- 我が国は,標準化が進んでいるヨーロッパ諸国と異なり,金額に応じて様々な建築物を建てることができるようになっている。これは,購入者にとって多様なオプションを提供することができるというメリットがあるが,反面,図面化を困難にするという問題がある。これからは,建築物の標準化が求められるのではないか。また,契約書面や図面に用いられる用語や符号の標準化も重要である。
- 銀行や保険会社などで作成している書面には,読めないような小さな字で書かれているものもあり,当事者は読んでいないのではないかと思う。そうすると,本当の合意ができているのか疑問である。建築関係の書面について検討する場合にも,本当の合意ができるように検討すべきである。
- 裁判を行うときには,裁判官や検察官などの専門家がいて,当事者には弁護士が付いている。建築契約に関しても,当事者双方に建築の専門家がアドバイザーとして付く制度を作ってはどうか。一定の対価を支払えば,相手側に本人の意思を伝えたり,契約を代行したりする制度を作ることも考えるべきである。施主が大きな組織であるならば,そのような事例があると思うが,戸建て住宅の場合であると,そのような制度は今のところ存在しない。保険会社が代行することも考えられるのではないか。
- 書面に関する問題点に関しては,教育が非常に重要であり,この点に関する講習会を開催する必要があると思う。その際,インターネットを利用することも考えられる。
(7)
1)建築基準法令の実体規定違反と建築物の瑕疵との関係
2)建築物の瑕疵による損害額の算定方法
この問題については,引き続き分科会で審議をすることとされた。
(8) 今後のスケジュール
1)第4回分科会 平成14年5月21日(火)午後2時
2)第5回分科会 平成14年7月19日(金)午後2時
3)第4回建築関係訴訟委員会は,後日期日の調整をして決定することとされた。