1. 日時
平成14年9月18日(水)午後3時
2. 場所
最高裁判所中会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
上谷宏二,内田祥哉,岡田恒男,尾崎行信,可部恒雄,鈴木誠,仙田満,畑郁夫,平山善吉,松本光平,村田麟太郎,安岡正人(浜美枝は欠席)
特別委員
大森文彦,坂本功,山口昭一,山本康弘(和田章は欠席)
オブザーバー
斎藤賢吉,工藤光悦,田中信義,齋藤隆,田中敦
事務局
千葉勝美,菅野雅之,舘内比佐志
4. 議事
(1) 開会の宣言
(2) 委員の任免について
猪口邦子委員が退任されたことに伴い,浜美枝氏が新たに建築関係訴訟委員会の委員に任命されたことが報告された。
(3) 鑑定結果等の還元スキームについて
平山分科会長から,建築関係訴訟委員会分科会(以下「分科会」という。)において鑑定結果等の還元方法について別添資料1『鑑定結果等の還元スキーム(案)』(PDF:9KB)のとおり決定されたことが報告され,本委員会において了承された。
(4) 司法支援建築会議における取組みの紹介
司法支援建築会議では,これまでに鑑定の行われた事件を中心に判例等のデータ蓄積とその分析に取り組んでいるとの報告がされた。また山本特別委員から司法支援建築会議における今後の事業計画である書物の出版についての紹介がされた。
(5) 建築関係紛争の原因分析について
大阪地方裁判所及び東京地方裁判所から,各裁判所建築集中部における事件統計に基づいた中間的な報告がされ,今後も引き続き共同して建築関係事件の原因分析を行っていくことの報告がされた。
(主な発言)
- 東京と大阪では,例えば法律構成の割合に差異が生じている。大阪では不法行為で構成される訴えの割合が比較的多いようである。
- ADR,例えば建設工事紛争審査会では中央と都道府県を合わせると新受・既済とも年間約250件程度があると聞いている。また弁護士会の仲裁センターにおいても,建築に関する件数はいまだ少ない状況にあるとのことだが,土日や夜間処理を行うなど力を入れていると聞いている。
- 調査によれば,例えば建築確認申請について,建物建築後に検査済証の交付を受ける割合が全国平均で約30パーセントであるが,大阪では平均13パーセント,東京では平均22パーセントである一方,仙台では75パーセント,横浜では50パーセントという結果が出ている。こういった地域性が訴訟にも影響しているのではないかと考えられるため,東京や大阪以外の裁判所についての情報の提供を検討していただきたい。
(6) 建築契約における書面の重要性に関する検討
事務局から,これまでに出された論点を整理したものについて,別添資料2『「建築契約における書面の重要性」に関する検討項目(案)』(PDF:16KB)の紹介がされた。
特別委員から,現在の約款の整備状況が別添資料3『約款の現状に関する一覧表』(PDF:78KB)のとおりであること,これによれば,ビル系は比較的充実しているが住宅系の整備が遅れており,トラブルの件数も多くなっていること,トラブルの原因として設計図書,打合せの内容,説明義務の3つがポイントとなることが説明された。また,事務局から,建築契約における契約書の在り方についてこれまでの意見を整理したものとして別添資料4『建築契約における契約書の在り方について(中間報告)』(PDF:16KB)の紹介がされた。
(主な発言)
- 委員会における検討結果の主な公表対象をエンドユーザーと考えるならば,書面の重要性よりもむしろ説明とその記録の重要性が大切と考える。
- 裁判所で扱う事件には,個人住宅等の小規模なものからビル系の大規模なものまでかなりの幅がある。すべての建築の設計・施工等を対象に議論するのは困難であり,議論の焦点を絞り込む必要がある。
- 東京や大阪の事件統計によれば,契約書や設計図書がない割合が非常に高く,しかも訴訟当事者自身がこれらに関する知識を持っていない場合が少なくない。このような中,委員会としてどのように情報を発信すべきか,どのようにして情報を伝えることができるのか,そのシステムを考えなければならない。
- 今後の議論の対象は,住宅系を中心に書面の有無や説明義務の内容を検討していくべきではないか。
- 不法行為は建築のプロとして守るべきことが守られていないという問題であるが,瑕疵担保責任や債務不履行は契約書の有無など書面についての問題も関係してくるので,紛争の原因分析においては法律構成と書面の有無等との関係を調査することも必要ではないか。また,それは訴訟の場合に限られるものではなく,訴訟に現れてくる場面以外においての契約書等の有無に関する現状も調査する必要があるのではないか。
- トラブルというものは,設計,施工,監理という流れの中というよりも,むしろ追加工事や変更工事に関する契約において発生する場面が多いと思う。こういうものをどのように契約書に盛り込むかが重要である。
- 契約書や設計図書も大事だが,見積書の在り方に関する議論も必要なのではないか。見積書をめぐるトラブルも非常に多く,例えば照明器具,門,扉,ガス・水道設備等住宅にとって当然必要なものが見積書に入っておらず「別途」となっていることが原因で紛争になることが多いように見受けられる。
- 業者側では,例えば契約書や見積書に不備があった場合,税務処理はどのようにされているのか。書面が整っていなくとも済んでしまうのか,そのあたりの社会システムを改善していくことが大切なのではないか。
- これから向かうべき訴訟社会においては,施工業者に対する教育が重要である。
- 確かに施工業者等に対しあるべき実務慣行を励行させることは重要と考えられるが,それを実現するためには,PRないし広報という視点が大切であろう。
- 初等や中等教育に盛り込んで意識を高めるという考えもあろうが,やはり実現可能性を視野に入れて考えなければならない。むしろ,消費者サイドに立ちその意思を汲み取りながら権利を守っていくという,コンサルタント制度のようなもの(例えば保険業者が代行することも考えられる。)を考えない限り,リスク回避をすることは困難ではないか。
- 契約書や設計図書がないにもかかわらず工事を行ってしまうこと自体が問題である。このような社会システムを改善していくためには,一般消費者に対するというよりも,むしろ建築専門家側の教育,それを通じた建築界のレベルアップが重要であると考える。
- 住宅に関して言えば,発注者側にとっては一生に一度あるかないかの問題で,その1回のために初等教育に建築の問題を組み込むというのはやはり難しいのではないか。その場合にはむしろ建築専門家側がサポートをするというシステムを作る方がよい。教育というよりアドバイザーなりコンサルタントといった問題である。
(7) 1)建築基準法令の実体規定違反と建築物の瑕疵との関係
2)建築物の瑕疵による損害額の算定方法
これらの問題については,引き続き分科会で審議することとされた。
(主な発言)
- そもそも「瑕疵」とは,安全性や機能的な不全の問題と,美的な問題がある。例えば柱の曲がりが建築のプロにしかわからないようなものであり機能的な不全が認められない場合についてどう考えるのか。もっとも,その建物が美的構成を重視し,しかも高単価であった場合には建て直しを考える余地はあるのかもしれない。
- 「瑕疵」といったものが裁判の中でどのように判断されているのかを,判例等からも分析する必要があるのではないか。
第7回分科会 平成14年11月21日(木)午後3時
第5回委員会及び第8回分科会 平成15年2月24日(月)午後3時