1. 日時
平成15年6月4日(水)午後1時
2. 場所
最高裁判所大会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
内田祥哉,尾崎行信,可部恒雄,鈴木誠,仙田満,畑郁夫,松本光平,浜美枝,
安岡正人(上谷宏二,岡田恒男,平山善吉,村田麟太郎は欠席)
特別委員
大森文彦,山本康弘,坂本功,山口昭一(和田章は欠席)
オブザーバー
斎藤賢吉,工藤光悦,田中信義,齋藤隆,田中敦
事務局
園尾隆司,菅野雅之,舘内比佐志,花村良一
4. 議事
(1) 開会の宣言
(2) 配付資料の説明
「鑑定人候補者推薦依頼一覧」(資料1)(PDF:363KB)について,前回の本委員会以降に推薦を得た事例を追加したことの説明がされた。
「建築建設鑑定人候補者推薦委員会に関する新聞記事(平成15年4月3日付け徳島新聞)」については,当委員会の活動に触発され,地方においても専門家と裁判所との間のネットワーク作りが行われてきたこと,その意味において,当委員会の存在は重要な意義を持っていたと思われること,今後は他の地方においてもこのような取組みがされることが期待されることの説明がされた。
(3) 「中間取りまとめ(案)」(資料2)について,前回の本委員会兼分科会の議論の結果を踏まえ,事務局において修正案を作成し,更に前回の分科会において出された意見を踏まえて作成したものであること,本日更に意見をいただきたい旨の説明がされた。また,第3の1において,別紙3を引用した説明部分の数値に誤記があり,訂正する旨の説明がされた(東京地裁の調停成立が69パーセントとあるのを66パーセントに,和解成立が14パーセントとあるのを17パーセントに,判決が12パーセントとあるのを10パーセントに,それぞれ訂正)。
その上で,以下に「主な発言」として記載したものを中心とした本日の議論の結果を踏まえて,表現や字句等につき若干の修文を加えたものを「中間とりまとめ」とすることで了承された。
(「中間取りまとめ(案)」第2について)
(主な発言)
- 「3(1)当委員会を含めた昨今の取組状況」中,建築紛争事件の運営に関する事項について1)ないし5)までを記載しているが,3)については,書面化よりも説明が重要であるとの意見があったかと思う。この点を盛り込んで,3)を,例えば,「建築契約における説明及び書面化の重要性に関する検討」としていただきたい。
- 3)の書面について,「文字等も判読しやすい,分かりやすい書面であるべき」という趣旨を入れていただきたい。
- 「3(1)当委員会を含めた昨今の取組状況」中,枠内の3にある司法支援建築会議における推薦ルールについての記載があるが,いかに公平を保つかということが大事であると考える。また,これから推薦する人数も増えていくので,母集団をいかに広げるか,いかに教育していくかも大事である。
(同第3について)
(主な発言)
- 「3(1)設計」中,報酬額について,「確たる報酬基準が存在していない」との記載があるが,基準が無いというより,例えば戸建ての受注等の場合は,個人の技術等によってかなり差がある等,基準を設定することが難しいというのが実情である。また,独占禁止法との関係でも問題がある。そのため,基準がある方が良い,と読みとられると問題である。文面上は,実際上困難である,といった表現が望ましい。
- 「3(2)施工」の中に,住宅金融公庫監修の約款に関する記載があるが,比較的規模の大きい建物を想定し,常駐監理者の存在を前提としているのは,民間の約款であって,住宅金融公庫監修の約款は必ずしもそうではない。原案の記載では,その点誤解を招くと思われるので,修正していただきたい。
- 「3(2)施工」の契約書についての記載は,ビル系など大規模な場合は,詳細についても文章化されている現状からは,専ら住宅系の小規模な場合についての事柄と思われる。
- 「3(監理)」の末尾に,「どの範囲の監理業務を行うべきかが争いとなる場合が多い」と記載されているが,業務の範囲は法定されていて明確であるから,契約書がある場合は問題とならない。何か問題が起きたときに,正常に施工されていないということを,責任者が見逃していることに対し責任が問われ,責任ある業務をしたかどうかが争いになる。つまり,業務の範囲というより,監理責任について争いとなる場合が多いので,そのような記載にしたほうがよいのではないか。もっとも,広義の監理という意味では,後で契約上の義務は何かという争いになることがある。
- 監理の意義について注釈を付けてはどうか。
- 「3(4)追加・変更」中,「注文者と建築技術者等の間における打合せの内容も書面化されないことがあり,すべて口頭でされるため」との記載があるが,すべてが口頭で行われているかのように解されることから,「書面化されないことがあるため」としたほうがよい。
- 「3(5)元請・下請」中,「元請人と下請人間の契約では,契約書は作成されておらず」とあるが,全く作成されていないわけではないので,「契約書は作成されないことが多く」としたほうがよい。
(同第4について)
(主な発言)
- 「1在るべき実務慣行に関する情報発信について」という表現は,悪しき慣行が前提になっているように読めることから,「適正な」といった表現をお願いしたい。また,「職業倫理に則った実務慣行を励行するための情報発信」との記載についても同様の趣旨で,「職業倫理」という言葉は,コミュニケーションなり書面化なりの適正な実務慣行,といった表現を用いた上で,副次的に使用していただきたい。
- 「1在るべき実務慣行に関する情報発信について」中,「建築契約を締結する際に,契約書面に基づいて,注文者に対し,分かりやすい説明を心がけることを励行するための情報発信が求められる」との記載があるが,最初の契約締結時だけでなく,追加・変更工事の場合も含めて指摘すべきことであるから,その旨を盛り込んでいただきたい。
- 裁判外紛争処理手続(ADR)は,建築の場合はどこまで期待されているのか分からないが,現状と今後の動きを知りたい。
- ADRについては,司法制度改革推進本部事務局で検討会が設置されており,その活用の活性化が課題とされている。裁判外で専門家を交えて,いわゆる裁判所的,一刀両断的な解決ではないやり方を模索している。ADRは,行政型だけでなく,民間型のものもできて,裁判と並ぶ魅力的な紛争解決方法としてより充実していくべきであると考えられている。
- 一般人にとって,家は一生に一回の買い物であることから,建築紛争は,感情に起因するものが多くなり,そのような場合はADRにも限界がある。紛争に至る前段階において,密接なアドバイスができればと思う。
- 一般の消費については,生活相談センターがあるが,建築業界等もそのような仕組みを作れれば良いと思う。
- 個人にとって,家を建てることは一生に一度のことであるのに,事態が悪化して初めて窓口相談に来る。一般市民に対して,予めこういう窓口がある,ということが分かるようにすることが大事であると思う。
- ADRの充実も大切であるが,現在ある裁判の運営が,どんどん変わってきて機能し始めその成果が上がりつつある段階であるから,第一には今の道をよりよく改善していくことが重要であると考える。
- 情報発信に関しては,日本建築学会としてもこの中間取りまとめは大変示唆に富んだものであると思うので,機関誌に掲載する等して,関係方面への周知を進めたいと考える。
- 「中間取りまとめ」は,最高裁判所のホームページに掲載されるほか,事務局名義で法律雑誌への掲載を検討している。
- 自分の経験から,注文者と建築技術者等のコミュニケーションはとても大切だと思う。市民に対する広報活動をお願いしたい。
(4) 今後のスケジュール
第7回委員会及び第11回分科会は,平成15年10月頃の開催を予定