トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第30回医事関係訴訟委員会・第28回鑑定人等選定分科会
1.日時
平成30年2月7日(水) 午後3時00分
2.場所
最高裁判所大会議室
3.出席者(敬称略)
委員
永井良三(委員長),五十嵐隆(委員長代理),新井一,髙本眞一,寺本民生,中村耕三,西岡清一郎,吉岡桂輔[小川聡及び吉村泰典は欠席]
オブザーバー
後藤健(東京地裁判事),比嘉一美(大阪地裁判事)
事務局
平田豊(民事局長),成田晋司(民事局第一課長),山本拓(民事局第二課長)
4.議事
(1) 開会の宣言
(2) 最近の医事関係訴訟の動向と課題
ア 医事関係訴訟統計等の報告
事務局から,医事関係訴訟事件の動向及び平成29年に各地方裁判所において開催された医療訴訟連絡協議会等の開催結果について報告があった。
イ 東京地裁・大阪地裁からの報告
東京地裁から,最近の医事関係訴訟の事件動向として,歯科及び美容整形の事件が目立っていることや,それぞれの事件の審理運営上の課題が報告され,歯科事件については,歯科大学と協議して鑑定人推薦の仕組みを新たに整備するなどし,美容整形事件については,早期に専門委員を関与させる試みを行うなどしているとの紹介があった。
また,大阪地裁から,同じく歯科及び美容整形の事件が目立つほか,精神科の事件が増えているといった報告があり,専門委員の確保や専門家を講師とした勉強会の開催等を行っているほか,歯科については,通常と異なる形式の診療経過一覧表を採用したことが紹介された。
ウ 意見交換
以上の報告を基に,最近の医事関係訴訟の動向が医療界及び法曹界に与える影響や今後の対応等について意見交換を行った。
(主な発言)
- 歯科や美容外科あるいは形成外科を含めて,医療のクオリティを維持する上では学会の関与が重要ではないか。学会がインフォームドコンセントの指導等をしている領域も存在するところである。
- 心臓外科の事案は死亡率が高いにもかかわらず裁判になっているものが少ない。これは,死亡率が高いために学会としても医療安全や患者への説明について注意しており,全症例のデータベース化や学会による各施設の訪問・評価等によって改善を図ってきたことが一つの要因ではないかと考えている。各学会で医療安全に相当,神経を使っていかなければいけないのではないか。
- 日本医学会では,歯学会や薬学会との間でも様々なことを一緒にやっていこうとしている。一つは,歯周病とも関係する内科的な病気等について勉強会をすることであり,もう一つは,司法の問題を含めて今何が問題となっているのかを議論してお互いに共有していくことである。医療全体としての信頼を維持することは,全体で取り組むべき課題であると思う。
- インフォームドコンセントは,医師が患者との信頼関係を作るためのツールであると考えられるが,最近は,説明さえすればよいという雰囲気がある。どのくらいの割合でこういう症状が発生しますという説明はされるが,当該患者の場合はどうなるのかは説明されない。
- 1万分の1で事故が起きるという場合,これを,1万分の1しか起きないのであなたは大丈夫と言うか,1万分の1起こるから大変と言うか,その言いようなので,ある意味コミュニケーション能力に依存するものである。ただ,今,医療界はややディフェンシブになっており,後者の言いようをする医師が増えている。それは患者にとっては必ずしも良いことではないと思う。
- 例えば,何パーセントでこういうことが起こりましたと答えたら,過去の頻度の話だが,これから何が起こるかというのは,ある程度予測であり,いわば「確信の程度」という新しい学術である。患者としては,最後は自分にとってどうかと聞きたいわけであるから,患者が本当にこだわった時には難しい話になる。一つの病名が付いた場合に,十把一絡げで説明するのではなく,よりハイリスクの人とローリスクの人に分けて説明していかなければならない。そのためのデータを現場でとって,その患者に固有の問題点をピックアップしていく努力は必要だと思う。
(3) 鑑定人候補者の選定の在り方について
ア 鑑定人候補者の選定手続について
現在の鑑定人候補者選定手続について,委員長は,医師である委員全員を鑑定人等候補者選定分科会(以下「分科会」という。)に属する委員として指名するとともに,委員長自身を分科会長に指名しているところ,分科会においては,個別の議決により推薦依頼先学会や鑑定人候補者を決定することに代えて,分科会長が分科会に属する委員の意見を聴いた上で推薦依頼先学会を決定し,特段の事情のない限り,当該学会から推薦された者を候補者として選定し,その経過を分科会開催時に事務局から報告することとされていることが確認され,今後も引き続き同様の手続によることとされた。
イ 候補者選定の経過等について
事務局から,本委員会から各学会に対して鑑定人の推薦依頼をした事案について経過報告があり,また,前回の報告後,委員会開催日までに推薦依頼をした事案について,別添「鑑定人候補者推薦依頼先学会の選定結果」(PDF:141KB)のとおり,推薦依頼先学会が選定された旨の報告があった。
ウ 前回の委員会の議論を踏まえた事務局の取組について
事務局から, 前回の委員会における議論を踏まえて,推薦依頼先学会選定の回答書の書式を改訂したこと,鑑定人候補者推薦依頼書における利害関係の記載の在り方について注意喚起を行ったこと等が報告された。
(4) 次回の予定等について
来年度についても,原則として本委員会及び分科会を合同で1回開催することが確認された。
以上