1. 日時
平成15年2月24日(月)午後3時
2. 場所
最高裁判所中会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
上谷宏二,内田祥哉,岡田恒男,可部恒雄,鈴木誠,仙田満, 畑郁夫,
平山善吉,松本光平,村田麟太郎,安岡正人(尾崎行信,浜美枝は欠席)
特別委員
大森文彦,山本康弘(坂本功,山口昭一,和田章は欠席)
オブザーバー
斎藤賢吉,工藤光悦,田中信義,齋藤隆,田中敦
事務局
園尾隆司,菅野雅之,花村良一
4. 議事
(1) 開会の宣言
(2) 事務当局者交代の報告
(3) 東京及び大阪地裁以外の裁判所における取組みについて
東京や大阪以外の地方,例えば横浜地裁や青森地裁においても,本委員会と同様に建築関係事件についての取組みがされ,その活動状況が紹介された。
(4) 第一次答申案のたたき台(案)について
(第1及び第2について)
(主な発言)
- 当委員会,日本建築学会,司法支援建築会議の三者の関係や,それぞれの位置付けについてもう少し分かりやすい説明を加えるべきである。
(第3について)
(主な発言)
- 「4 契約書の在り方」の中に,契約前の段階での説明が重要であることを盛り込む必要があるのではないか。仮に契約書がきちんとしていても,その前の見積書の段階で,施主に対しどのような説明がされたかが紛争の大きな原因になっている場合が多いからである。住宅系の場合では,見積書を読んでいるため,契約書を取り交わす段階では見積書のイメージのまま契約書の内容をよく読まずに契約書に署名するといったことになりやすい。そのため,後になってから,別途工事なのか契約の範囲内なのかという紛争が生じる。それを防止するためには,見積りの段階で十分な説明がされ,施主との間できちんとした確認作業が行われるべきであると考えられる。また,工事業者の中には,契約後も打合せの都度確認書面を作成し,施主に確認のサインをもらうということを実施している業者もある。これは,紛争を防止し,解決する方策として有益な手段だと考えられる。
- 別紙8「建築関係訴訟における契約書の有無について」(PDF:59KB)は,もう少し細かくデータを分析してみた方がよいと思われる。
- 実際には,ビル系など大規模な場合には,契約前の段階できちんとした説明が行われているのがほとんどだが,住宅系の個人対業者の場合では,きちんとしていない場合が多いのではないか。
- 工事段階での設計変更や追加工事が紛争の大きな原因となっている場合が多く,これには設計者が介入しているか否かは関係ないように思われる。変更や追加の場合,その経過を記録化することが重要になってくる。
- 本答申案で行っている分析は,紛争に至った事例の中から契約書の有無とトラブルの発生との因果関係などを分析しようとするものである。しかし,本来的な分析というものは,紛争が起こらなかった場合も含め,全てのケースに対して行うべきではないか。
- 一般的に契約書が存在する場合ではどのくらいの割合で紛争が起こるのかなども分析できれば有益と考える。
- 本委員会は「訴訟委員会」であり,紛争の問題を分析しているのであるから,紛争事例の範囲内で分析していくことが望ましいと考える。紛争になっていない事例についてまで取り扱うのは,別の場であるべきである。全ての事例ということであれば,統計を取ること自体に無理があるため分析そのものが難しい。
- 裁判実務では,元請と下請との間での紛争がかなりの割合で存在し,裁判所としても頭を悩ます事件の一類型といえる。こういった紛争では,契約書が存在せず,追加・変更の内容も不明で,残っているのは断片的な書面のみという場合が多く,その一方では紛争の金額が大きかったり,孫請等にも影響が及ぶなどの状況もあることを考えると,早期に問題解決を図りたい事件である。この元請・下請についても答申に盛り込むべきではないか。
- 下請や孫請に関する問題は,労働紛争としての性格も帯びており,全て建築紛争といえるかどうか疑問もあるが,今後はこの種の紛争が爆発的に増えてくると考えられる。紛争の「予防」と「解決」との結びつきを記載すべきである。
- 第3では,紛争「解決」のための方策ではなく,紛争「予防」について現状から分析したということではないか。
(第4について)
(主な発言)
- 施主側の理解不足も紛争の原因の一つと考えられるが,例えば手抜き工事の問題や騙した騙されたなどということなど,建築業界側の者にも紛争の原因がある場合もあり,その点についても述べておく必要があるのではないか。長期化している訴訟事件には,設計者が無責任なため事後対応もきちんととられていないものや,監理者がいれば紛争にならなかったと思われるものも多く,また,欠陥住宅にはおよそ専門家の工事とは考えられないようなものもある。建築家の倫理についての言及も盛り込むべきではないか。
- 相談窓口には,契約締結前に相談する窓口と,工事完了後に不具合が生じた場合に相談する窓口の二種類があるとの記載があるが,もうひとつその中間的なものが考えられると思う。その点を検討した上で盛り込むことはできないか。
- 司法制度改革審議会意見書では,建築紛争審査会などのADRが重要であるとされている。日本人は,費用や時間が掛かるからであろうか,裁判での解決を嫌うところがあり,そういう意味で我が国では調停手続が重要な役割を果たしていると考えられる。このことから,「駆け込み寺」との表現について,もう少し詳しい解説を加える必要があるのではないか。
- 「駆け込み寺」との表現は不適切と思われるがどうか。
- 紛争解決に向けては,日本建築学会側でも司法支援建築会議を立ち上げて協力を頂いているところだが,紛争の防止については,この委員会としてどこまでできるのか,もう少し検討をする必要がある。
- 現実の紛争の中には,特殊な意見を持つ専門家(学者)を当該紛争に引きずり込んだ上で紛争を複雑化してしまう例もある。答申には,建築業界側,施主側といったそれぞれの立場を踏まえた上で記述する必要があると思われる。
- 建築の専門家にも技術力の格差が顕在し,それが原因で訴訟となっている場合も多いと思われる。
- 私的鑑定人が介入したため,訴訟がかえって複雑化したというようなケースも見られる。
- 諮問事項には「適正かつ合理的期間内」に解決とあるが,その点の検討がされていないと思われる。審理が長期化している原因の分析が必要と考えるがどうか。
- この委員会は,建築紛争解決の長期化を防止するためのいくつかの基盤整備のうちの一つと考えられる。鑑定人選任スキーム確立の話は,審理迅速化の問題端を発しているものであり,その点を盛り込んでみてはどうか。
- 契約書などの書面がきちんと揃っていれば,仮に紛争が起こったとしてもある程度短期間で解決すると考えられるのである。その点を盛り込んでみてはどうか。
- 紛争当事者には,請負人と発注者にとどまらず元請や下請,監理者等も含まれるのであるから,「契約当事者」とするなど,定義付けの工夫が必要と思われる。
- 設計者が現場で元請とだけ接し,下請と接していないことにより,監理が十分できないということが起こる。設計者側は,監理をしなくてはならない,しかし下請とは接触できないというジレンマに陥ることになる。このような問題もあるということを,答申の中に記述しておく必要があると思われるがどうか。
- 元請の能力的な問題,コンストラクションマネジメントができていないということであり,設計者が見るに見かねてやっているということではないか。
(5) 今後のスケジュール
第9回分科会 平成15年4月17日(木)午後3時