トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 裁判官の人事評価の在り方に関する研究会 > 第3 関連する人事評価制度
1. 公務部門における人事評価制度
(1) 国家公務員の勤務評定制度について
国家公務員の勤務評定制度は,国家公務員法71条(能率の根本基準)及び72条(勤務成績の評定),それに基づく人事院規則10―2(勤務評定の根本基準),勤務成績の評定の手続及び記録に関する政令並びにそれに基づく内閣府令により定められている。
(注)現行の勤務評定制度
現行制度を概観すると,まず,「職員の執務については,その所轄庁の長は,定期的に勤務成績の評定を行い,その評定の結果に応 じた措置を講じなければならない。」とされている(国家公務員法72条1項)。そして,勤務評定は,「人事の公正な基礎の一つとするために,職員の執務について勤務成績を評定し,これを記録することをいう。」とされている(人事院規則10―2第1条)。
(2) 公務部門における人事評価制度を巡る動向
人事院は,公務組織がこれからの時代に適応し,効率的かつ効果的に機能するためには,能力,実績を適正に評価する仕組みが不可欠であるとの認識から,平成11年9月,「能力,実績等の評価・活用に関する研究会」を設置した。同研究会は,平成13年3月,最終報告「公務員の新人事評価システム」(以下,「人事院の研究会報告」という。)を提出した。また,総務庁(現在の総務省)においても,公務員制度改革の一つの柱としての人事評価システムの改革について,平成11年10月,「人事評価研究会」を設置して検討を開始した。同研究会は,平成12年5月,「人事評価研究会報告書」を提出した。そして,政府は,平成13年12月25日,「公務員制度改革大綱」を閣議決定し,真に国民本位の行政の実現を図ることを基本理念として, 国民の立場から公務員制度を抜本的に改革することで,行政の在り方自体の改革を目指すという基本理念の下に,公務員制度全般にわたって,改革の基本的な考え方を示したが,人事評価制度の改革もその重要な柱の一つとなっている。
このように,公務部門の人事評価制度はまさに変動期にあるといえるが, 裁判官の人事評価の在り方を検討するに当たっては,以上のような公務部門における人事評価制度を巡る動向にも留意する必要がある。このような問題意識から,当研究会は,有識者からヒアリングを行い,その動向について実情を把握したところである。その内容は,最高裁判所のインターネット・ホームページの当研究会の第2回の協議内容のとおりである。もっとも,裁判官は国家公務員であるとはいえ,一般職の国家公務員と比較して,その身分,職務等に特性が見られるので,その特性を十分考慮した検討を行っていく必要があることはもちろんである。
2. 民間部門における人事評価制度
民間企業においては,バブル経済崩壊後の経済成長の鈍化・停滞,急速な国際化と国際競争の激化の下で,終身雇用,年功序列型の昇進と賃金という,いわゆる日本的雇用の特徴を維持することが難しくなり,能力主義,成果主義人事への傾斜が強まっているとされ,多くの企業が能力や業績を重視する方向での人事,処遇制度の改革に取り組んでいるとされている(新人事評価システム研究会「公務員のための新人事評価システム~人事院の研究会報告とその解説~」)。このように,民間部門の人事評価制度も変動期にある。
民間部門の人事評価制度の動向は,公務部門における人事評価制度に影響を及ぼすものであり,裁判官の人事評価の在り方を検討するに当たっても,その動向に留意する必要がある。このような問題意識から,当研究会は,有識者からヒアリングを行い,その動向について実情の把握に努めた。その内容は,最高裁判所のインターネット・ホームページの当研究会の第5回の協議内容のとおりである。
3. 諸外国の裁判官の人事評価制度
我が国の裁判官の人事評価の在り方を検討するに当たっては,諸外国の裁判官の人事評価制度も参考となろう。もとより,各国の司法制度は,それぞれの歴史的,社会的,文化的背景の下で形成されてきたものであり,裁判官の人事制度も大きく異なっているので,参考とするに当たっては,そうした事情を十分に念頭に置く必要がある。
そこで,当研究会においては,裁判官制度について,我が国と同じいわゆるキャリア・システムを採用しているドイツ連邦共和国(ドイツ)及びフランス共和国(フランス)と,いわゆる法曹一元を採用しているイングランド及びウェールズ(イギリス)及びアメリカ合衆国(アメリカ)を対象国として取り上げることとし,それぞれの国の司法制度を概観した上で,裁判官の人事制度及びその下における人事評価制度について,主として委員及び幹事から調査結果の報告等を受ける方法により検討した。その内容は,最高裁判所のインターネット・ホームページの当研究会の第3回及び第4回の協議内容及び資料のとおりである。本報告においては,制度の具体的な在り方を検討するに際し必要な限度で,適宜,その内容に言及することにしたい。