第1 借地非訟とは

1 土地の貸し借り

土地を借りて利用する場合の契約(「借地契約」といいます。)には、以下のものがあります。

  1. 土地賃貸借契約(地代を支払うもの)
  2. 土地使用貸借契約(無料で使わせてもらうもの)
  3. 地上権設定契約(地上権という物権を設定するもの)

2 借地借家法との関係

借地非訟事件の手続では、借地契約のうち旧借地法及び借地借家法に定められた借地権を扱います。
したがって、建物の所有を目的とする土地賃貸借契約又は地上権設定契約であることが必要となります。

3 借地非訟事件の種類

借地非訟事件として取り扱うことができる事件は、次の6種類です。

(1)  借地条件変更申立事件(借地借家法17条1項)

  • 借地契約には、借地上に建築できる建物の種類(居宅・店舗・共同住宅など)・建物の構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)・建物の規模(床面積・階数・高さなど)・建物の用途(自己使用・賃貸用・事業用など)等を制限している例が多く見られます(よくあるのは「借地上の建物は、非堅固建物に限る」といったもので、このような制限を借地条件といいます。)。
  • 借地権者が、これらの借地条件を変更して、別の構造等の建物に新しく建て替えたい場合、たとえば、「木造建物」(非堅固建物)を「ビル」などの鉄筋コンクリート造の建物(堅固建物)に建て替えたい場合には、土地所有者との間で借地条件を変更する旨の合意をすることが必要になりますが、土地所有者との間で合意をすることができないことがあります。
  • このようなとき、借地権者は、借地条件変更の申立てをして、裁判所が相当と認めれば、借地契約の借地条件を変更する裁判を受けることができます。
  • なお、東京地裁の借地非訟係では、借地契約において、地上の建物の建替え(改築)・増築・大修繕等をするには土地所有者の承諾が必要である旨の定めがある場合に、適法に借地条件の変更を必要とする増改築をしようとするときは、借地条件変更の申立てとともに、後記(2)の増改築許可の申立てをしていただく扱いをすることになりました。詳しくはQ&A(PDF:265KB)をご覧下さい

(2)  増改築許可申立事件(借地借家法17条2項)

  • 借地契約には、借地上の建物の建替え(改築)・増築・大修繕等をする場合には土地所有者の承諾が必要であると定めている例が多く見られます。このような場合、借地権者は、土地所有者の承諾を得る必要がありますが、土地所有者の承諾を得られないことがあります。
  • このようなとき、借地権者は、増改築許可の申立てをして、裁判所が相当と認めれば、土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。
  • なお、増改築後の建物が借地条件と異なる場合には、増改築許可申立てとともに、前記の借地条件変更の申立てをする必要があります。

(3)  更新後の建物再築許可申立事件(借地借家法18条1項)

※本申立ては、平成4年8月1日以降に設定された借地権についてのみ適用されます。

  • 借地契約の更新後に、借地権者がやむを得ない事情で残存期間を超えて存続すべき建物を築造するときは、土地所有者の承諾を得る必要がありますが(借地借家法8条1項、2項)、土地所有者の承諾を得られないことがあります。
  • このようなときは、借地権者は、更新後の建物再築許可の申立てをして、裁判所が相当と認めれば、土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。
  • なお、借地条件と異なる建物を再築しようとするときは、更新後の建物再築許可の申立てとともに、前記の借地条件変更の申立てをする必要があります。

(4)  土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件(借地借家法19条1項)

  • 借地契約が土地の賃貸借契約の場合、借地権者が借地上の建物を譲渡するときは、(これに伴って土地の賃借権も移転することになるため)土地所有者の承諾を得る必要がありますが(民法612条)、土地所有者の承諾を得られないことがあります。
  • このようなとき、借地権者は、土地の賃借権譲渡許可の申立てをして、裁判所が相当と認めれば、土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。

(5)  競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件(借地借家法20条1項)

  • 借地契約が土地賃貸借契約の場合、競売又は公売で借地上の建物を買い受けた人は、(これに伴って土地の賃借権も譲り受けることになるため)土地の賃借権の譲受けについて土地所有者の承諾を得る必要がありますが(民法612条)、土地所有者の承諾を得られないことがあります。
  • このようなとき、借地上の建物を買い受けた人は、競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可の申立てをして、裁判所が相当と認めれば、土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。
  • この申立ては、建物の代金を支払った後2か月以内にしなければならないので、ご注意ください(借地借家法20条3項)。

(6)  借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件(借地借家法19条3項、20条2項)

  • 上記の(4)(土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件)及び(5)(競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件)の場合、土地所有者には自ら土地の賃借権を借地上の建物と一緒に優先的に買い取ることができる権利(「介入権」といわれています。)が与えられています。
  • 土地所有者は、裁判所が定めた期間内に限り、介入権を行使する申立てをすることができます。
  • 裁判所が定めた期間内に介入権行使の申立てがありますと、原則として、土地所有者が借地権者の建物及び土地の賃借権を裁判所が定めた価格で買い受けることになります。

4 借地非訟事件手続のあらまし

借地非訟事件の手続は、おおよそ、以下の手順で進行します。多くの事件は、特段の事情がなければ、概ね1年以内には終わっています。

  1. 借地権者(申立人)が、民事第22部に申立書を提出する。
  2. 裁判所が、第1回審問期日を定めるとともに申立書を土地所有者(相手方)に郵送する。
  3. 裁判所は、第1回審問期日を開き、当事者(申立人及び相手方)から陳述を聴く(必要に応じて第2回、第3回と期日を重ねる。)。
  4. 裁判所が、鑑定委員会に、許可の可否、承諾料額、賃料額、建物及び借地権価格等について意見を求める。
  5. 鑑定委員会が、現地の状況を調査する(当事者も立ち会う。)。
  6. 鑑定委員会が、裁判所に意見書を提出し、裁判所は意見書を当事者に送付する。
  7. 裁判所が、鑑定委員会の意見について、当事者から意見を聴くための最終審問期日を開き、審理を終了する。
  8. 裁判所が、決定書を作成し、当事者に送付する。
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