トップ > 各地の裁判所 > 東京地方裁判所/東京簡裁以外の都内簡易裁判所 > 裁判手続きを利用する方へ > 民事第29部・第40部・第46部・第47部(知的財産権部) > 営業秘密に関する当事者尋問等の公開停止について
平成20年12月
東京地方裁判所知的財産権部
(民事第29部,第40部,第46部,第47部)
1. 当事者尋問等の公開停止制度の概要
憲法82条は,裁判の公開の原則を定めるとともに,「公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある」場合には,例外的に審理を非公開とすることを認めています。従来から,営業秘密に関する当事者尋問等が「公の秩序又は善良な風俗を害する虞がある」と認められる場合には,その尋問の全部又は一部を非公開とすることができるものと理解されていましたが,「公の秩序又は善良な風俗を害する虞がある」という要件は,必ずしも明確ではありません。
そこで,特許権等若しくは実用新案権等の侵害に係る訴訟又は不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟について,憲法の認める範囲内で,公開停止の要件及び手続を法律で明確化する必要性が認識されたことから,営業秘密に関する当事者尋問等の公開停止の規定として,特許法105条の7,実用新案法30条(特許法105条の7準用)及び不正競争防止法13条が,平成16年の法改正(平成17年4月1日施行)で新たに設けられました。
これら規定の適用は,侵害の立証に関する尋問をする場合に限定されており,損害額の立証に関する尋問や職務発明の対価を請求する事件には適用されないことになっています。
2. 手続の概要
(1)手続の開始
公開停止について当事者に申立権はなく,公開停止決定は裁判所の職権によってされます。当事者が裁判所に対して職権の発動を促す方法としては,上申書を提出する方法や尋問の公開停止を求める旨を証拠申出書に記載する方法などが考えられます。当事者は,公開停止の要件について,これら上申書等に具体的に主張を記載するとともに,その主張を裏付ける資料を提出しなければなりません。なお,これら上申書等や裏付資料の中に営業秘密に関する記載がある場合には,これらの書面につき閲覧等制限の申立てなどをしておく必要があります。
(2)公開停止の決定と審理
尋問事項が公開停止に係る尋問事項に及ぶところで,公衆を退廷させる前に公開停止の決定が理由とともに言い渡され,公衆が退廷させられます。その後,当該尋問事項の尋問が終了したところで,公衆が入廷することができるようになります(特許法105条の7第5項,実用新案法30条,不正競争防止法13条5項)。
(3)尋問後の処置
第三者であっても,利害関係を疎明すれば,公開を停止して実施した尋問の証人等調書の閲覧等をすることが可能です(民事訴訟法91条2項,3項)。
したがって,当事者尋問等の公開を停止した意味が失われることのないよう,当事者は,当該証人等調書の秘密記載部分につき閲覧等制限の申立てをしておく必要があります。
以上