トップ > 各地の裁判所 > 東京地方裁判所/東京簡裁以外の都内簡易裁判所 > 裁判手続きを利用する方へ > 民事第21部(民事執行センター・インフォメーション21) > 物件明細係の扱う事務について
1.物件明細書の作成
当係で行っている中心的な事務は,物件明細書の作成です。
物件明細書には,不動産にかかる権利の取得等で売却によりその効力を失わないものや売却により設定されたとみなされる地上権の概要等が記載されることになります(民執法62)。例えば,買受人が引き受けなければならない権利(賃借権等)がある場合にはその内容が物件明細書に記載されることになるのです。
したがって,当係の具体的な作業としては,競売事件の記録中にある(不動産)登記事項証明書,現況調査報告書,評価書,債権届出書,交付要求書などの書類を精査し,また,必要があれば執行裁判所が関係者から直接事情を聴取するなどの方法によって,当該不動産の権利関係を調査し,この調査結果に基づいて,売却条件(売却によっても買受人が引き受けなければならない賃借権等の権利があるか否か等)を判断し,裁判所書記官がその結果を物件明細書に記載することになります。
なお,このような作業を行う前提として,それまでの手続(例えば,開始決定正本の送達の有無や滞納処分が先行している場合の続行決定の有無など)が適正に行われていたか否かを点検・調査することも当係の重要な事務となっています。
2.売却基準価額等の決定
当係では,物件明細書の作成のほかに執行裁判所による売却基準価額の決定手続を行っています。
売却基準価額とは,評価人の評価に基づき,執行裁判所が不動産の売却の基準となる価額を定めたものです。
買受可能価額とは,買受申出(入札)価額がこの価額以上(この価額を含む。)でなければ適法な入札とならないという価額です。これは,売却基準価額から10分の2に相当する額を控除した価額です。
売却基準価額を決定するためには,目的不動産に関する権利関係が明らかにされ,売却条件が明らかになっていることが必要となるため,物件明細書の作成と同時に売却基準価額の決定手続を行っています。
なお,売却基準価額は,執行裁判所が評価人の評価に基づいて定めなければならないとされているため(民執法60Ⅰ),売却基準価額の決定要因として最終的に確定した売却条件が,評価書に反映されていなかった場合などには,評価人に対して評価書の補正を命ずることもあります。したがって,評価人から評価書が提出されていても,当係で物件明細書を作成し,売却基準価額が決定されるまでの間は,評価書の内容は確定していないことになるのです。このことから,売却基準価額が決定されるまでは,当事者及び利害関係人からの評価書等についての閲覧申請は認められない扱いとなっています。
3.無剰余取消の手続
次の各場合を無剰余といいます。
(1) 差押債権者の債権に優先する債権(先順位の抵当権の被担保債権等。以下「優先債権」という。)がない場合において,不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
(2) 優先債権がある場合において,不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。
この場合,執行裁判所からの無剰余通知に対して,差押債権者が剰余のあることを証明するなどの手段を講じない限り,不動産競売の手続を取り消さなければならないとされています(民執法63Ⅰ~Ⅳ)。
したがって,当係では,売却基準価額決定の際に,無剰余となるか否かについての審査を実施し,無剰余となる場合には,無剰余通知書の作成・発送,不動産競売手続の取消決定等の手続を行っています。
【案内・書式】無剰余取消しを回避する方法について
4.その他の付随事務
(1) 地代代払許可申立てに関する受理,審査,決定手続
(2) 物件明細書を作成した裁判所書記官の処分に対する異議申立てに関する受理,審査,決定手続
(3) 売却基準価額の決定に対する執行異議申立てに関する受理,審査,決定手続
【案内・書式】地代代払許可の申立てについて