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はじめに
大阪地裁倒産部(第6民事部)は、破産、個人再生、民事再生、会社更生、特別清算など、地方裁判所で行うことのできる倒産事件の全てを取り扱っています。
倒産に関係する問題は、例えば、ある日突然勤務先の会社が倒産した、取引先の会社が倒産して自社の資金繰りが急に悪化したなど、思いがけないタイミングで生じることが少なくありません。
このページでは、債権者(貸したお金を返してもらったり売った商品の代金を支払ってもらったりする権利のある人)や債務者(借りたお金を返したり買った商品の代金を支払ったりする義務のある人)として倒産手続に関わることとなった場合に参考となる情報を掲載しています。
裁判所は、倒産手続において、債権者と債務者双方の言い分を聴いて判断をする必要がありますので、その一方からの相談に応じることはできません。
債務整理の相談は弁護士にしてください。
また、弁護士でない者が依頼を受けて債務整理などの法律業務を行うことは、法律で禁止されています(司法書士は、一定の限度でこれらの業務を行うことができます。)。
無資格者への債務整理の依頼はしないよう、くれぐれもご注意ください。
Q&A
倒産手続について
Q1 倒産手続とはどのようなものなのでしょうか?
倒産手続とは、約束どおりに債務(借金)の返済ができなくなった個人や会社(法人)が、法律によって定められた方法で債務を整理し、経済的な立ち直り又は会社の清算を目指す手続のことです。
このうち個人が利用することの多い倒産手続は、破産手続と個人再生手続です[Q2参照]。
Q2 破産手続と個人再生手続の違いはなんですか?
破産手続は、法律で定められたものを除いて、自宅や自動車といった債務者の財産すべてを手放してお金に換え、債権者に公平に配当(分配)する手続きです。
債務(借金)が残った場合には、法律で定められたものを除き、原則としてその責任を免れることができます[Q7、Q8参照]。
個人再生手続は、自宅や自動車といった財産を保有し続けることができるのですが、法律で定められた一定額まで、手続中に作成した計画にしたがって、債務の分割返済を続けなければならない手続きです。
残った債務は、原則として免除されます[Q19参照]。
個人再生手続を利用するには、継続又は反復した収入を得ていることが必要ですし、法律で定められた方法で算出される総債務額が5000万円以下でなければなりません。
破産手続について
Q3 破産手続はどのように進んでいくのですか?
まず、裁判所は、破産手続を開始してほしいという申立てをした人が提出した書面を見たり債務者から直接話を聞いたりして、債務者が債務(借金)の返済ができない状態にあるかを審査し、法律が定める要件に合えば、破産手続を開始する決定をします。
破産手続が開始されると、破産管財人が選任されます。
破産管財人は、ほとんどの場合、弁護士から選ばれます。
そして、破産管財人は、債務者の財産を管理してお金に換えていき(このため、債務者は自分の財産を自由に使用・処分することはできなくなります。)、そのお金を、法律が定める優先順位にしたがって、債権者に平等に配当(分配)します。
配当が終われば、破産手続は終了します。
このような破産管財人が選任される破産手続を「管財事件」といいますが、例外的に破産管財人が選任されない破産手続もあります。
これを「同時廃止事件」といいます[Q4参照]。
Q4 同時廃止事件とはどのような手続きなのですか?
同時廃止事件とは、破産手続を開始する決定と同時に、破産手続を終了(廃止)させる手続きです。
管財事件では、破産管財人[Q3参照]が職務を行うための費用として、一定程度のお金を準備していただく必要がありますが[Q5参照]、債務者が持っている財産が非常に少なく、このようなお金すら用意できないことが明らかな場合には、破産管財人を選任しないで破産手続を終了させることが法律で認められています。
同時廃止事件では財産の処分や配当(分配)は行われません。
免責に関する審理[Q7、Q8参照]は、破産手続が終了した後にも継続して行われます。
法律では、破産手続は管財事件として進めるのが原則とされ、同時廃止事件は例外的な取扱いとされています。
破産を申し立てた人が希望したからといって、必ず同時廃止事件として破産手続が進められるわけではありません。
Q5 破産を申し立てる費用はどのくらい必要ですか?
まず、裁判所に納める手数料や郵便切手、官報に破産に関する情報を掲載するための費用として、合計2万円程度が必要です。
加えて、管財事件の場合には、破産管財人[Q3参照]を選任して破産手続を進める費用を用意していただく必要があります。
用意が必要な費用の額は、事件ごとに裁判所が決めることになっています。
大阪地裁倒産部(第6民事部)では、弁護士に依頼して破産の申立てをする場合は最低20万円、弁護士に依頼しないでご本人が破産の申立てをする場合は最低50万円の用意を求めています。
なお、弁護士に破産の申立てを依頼する場合には、別途、依頼した弁護士への報酬等を支払う必要があります。
具体的な金額は、依頼した弁護士にお尋ねください。
Q6 破産手続を利用することで不利益はありますか?
破産手続が開始されると、生命保険の外交員や警備員といった特定の職業に就くことができなくなります。
この制約は、10年が経過するか免責許可の決定を受ける[Q7参照]などして復権されるまで、継続します。
また、債務者は、破産手続が終わるまでの間、自分の財産を自由に使用・処分することができなくなります。
債務者の財産は破産管財人[Q3参照]がお金に換えていきますので、自宅は手放さなければなりませんし、保険契約は解約されることがあります。
さらに、債務者は、破産手続が終わるまでの間、裁判所の許可を受けずに転居することができません。
郵便物は破産管財人が中身を検査することになりますし、破産管財人の職務に協力する義務も負います。
これらの義務に反した場合には、免責が許可されなかったり[Q8参照]刑罰を受けたりすることがあります。
Q7 破産をしたら債務(借金)を返済しなくてよくなるのですか?
個人の場合、破産をしただけでは債務(借金)を返済する責任を免れることはできません。
裁判所は、債権者の意見を聴くなどして破産した債務者の免責を認めるべきかどうかを審理します。
この審理の結果、免責許可の決定を受け[Q8参照]、それが確定することで初めて、債務者は、負っていた債務を法律上返済する責任がなくなります。
また、債務者は、免責許可の決定を受けることで、破産により制限された権利や資格が回復します[Q6参照]。
ただし、免責許可の決定を受けても、養育費を支払う義務など法律で定められた一部の債務については、法律上返済する責任を免れることはできません。
なお、会社(法人)は、破産手続が終了して清算が終われば法律上消滅しますので、免責に関する審理は行われません。
Q8 免責許可の決定は必ず受けることができるのですか?
破産した債務者は、免責不許可事由が認められない限り、免責許可の決定を受けることができます。
免責不許可事由には、例えば、債務(借金)を負った理由が浪費やギャンブルであること、破産手続の中でわざと債権者を正しく申告しなかったり、財産を隠したり、破産管財人の調査にうその回答をしたりしたことなどが挙げられます。
もっとも、免責不許可事由が認められるからといって、免責許可の決定を受けることが絶対にできないわけではありません。
裁判所が、破産管財人[Q3参照]の意見を聴くなどした上で相当と認める場合には、裁量によって免責を許可することができるとされています。
Q9 裁判所から、お金を貸した債務者について破産手続開始の通知書が送られてきました。どうすればよいですか?
管財事件か同時廃止事件か[Q3、Q4参照]で違いがあります。
管財事件か同時廃止事件かどうかは、通知書の記載を確認して区別をお願いします。
管財事件では、通知書に破産管財人[Q3参照]の氏名が記載されています。
債権者集会の開催が決まっている場合には、債権者集会の日時場所も記載されています。
他方、同時廃止事件では、通知書に破産管財人等の記載がない代わりに、破産手続を開始することに加えて「同時に破産手続を終了させる破産廃止の決定をする」という記載があります。
管財事件では、原則として、破産管財人が破産した債務者の財産状況等を報告する集会(債権者集会)が開催されます。
債権者集会への出席を希望される場合は、通知書に記載された日時場所にお越しください。
債権者集会に出席するかどうかは債権者の自由で、出席しなかったからといって配当(分配)を受けられなくなるといった不利益はありません。
同時廃止事件[Q4参照]では、債権者集会は開催されませんので、特に対応いただくものはありません。
Q10 破産債権届出書が送られてきました。これはなんですか?
破産債権届出書は、債務者の財産を処分して得たお金を債権者の皆様へ配当(分配)できる見込みとなった段階で送付されるものです。
破産債権届出書を受け取った場合には、同封された「破産債権の届出の方法等について」を熟読して、必要事項を記載し、必要書類を添付した上で、決められた期限までに到着するように、裁判所へ返送してください。
この届出をしないと、配当を受けられないことがありますので、ご注意ください。
同時廃止事件[Q4参照]では配当が行われませんので、破産債権届出書は送付されません。
Q11 お金を貸した債務者の免責に関して意見を述べたいです。どうすればよいですか?
債権者は、管財事件、同時廃止事件に共通のこととして、破産した債務者の免責を許可すべきかどうか[Q7、Q8参照]について、意見を述べることができます。
お手元に届いている破産手続開始の通知書[Q9参照]に、免責に関する意見を述べる期間(意見申述期間)が記載されています。
その期間内に裁判所に到着するように、意見を記載した書面を郵送してください。
意見書には、述べたい意見だけでなく、作成者の署名と押印(認め印)、作成日付、通知書に書かれた事件番号(令和○年(フ)第○○○○号というもの)、債務者の氏名を記載してください。
意見書を裁判所まで直接持参されても結構です。
個人再生手続について
Q12 個人再生手続はどのような場合に利用できますか?
個人再生手続は、継続又は反復した収入を得られる見込みがあるが、多額の債務(借金)を負ったため返済ができない場合に利用することができる手続きです。
法律で定められた方法によって計算される債務の総額が5000万円以下でなければなりません。
個人再生手続には、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の2種類があります[Q13参照]。
Q13 小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の違いはなんですか?
小規模個人再生手続では、手続中に作成した分割返済の計画について債権者の賛否を問う手続きがあります。
債権者の半数以上又は債権額の半額を超える不同意があった場合には、小規模個人再生手続による分割返済を行うことができず、手続きは途中で打ち切り(廃止)となります。
給与所得者等再生手続では、分割返済の計画について債権者の意見を聴取する手続きがありますが、小規模個人再生手続のように債権者の賛否を問う手続きはありません。
その代わり、得ている収入が継続又は反復したものであるだけでなく、給与又はこれに類する定期的なもので金額の変動の幅も小さいと見込まれるものである必要があります。
さらに、事情によっては、小規模個人再生手続と比べて分割返済しなければならない債務(借金)の額が高くなることもあります[Q14参照]。
Q14 個人再生手続で返済しなければならない債務(借金)の額はどのくらいですか?
現在負っている債務(借金)の内容や総額、保有している資産(現金、預貯金、保険の解約返戻金、不動産など)の評価額の合計によって変わります。
一般的には、債務の総額によって定まる以下の金額と現在保有している資産の評価額合計を比べて高いものが、最低でも返済しなければならない金額となります。
さらに、給与所得者等再生手続では、法律によって定まる2年分の可処分所得額より多くなければなりません。
債務総額が100万円未満 | 全額 |
100万円以上500万円以下 | 100万円 |
500万円より高く1500万円以下 | 債務総額の2割 |
1500万円より高く3000万円以下 | 300万円 |
3000万円より高く5000万円以下 | 債務総額の1割 |
Q15 債務(借金)の分割返済はどのくらいの期間続くのですか?
法律で定められた分割返済の期間は、原則として3年です。
特別な事情がある場合には、5年まで伸ばすことができます。
なお、分割払金の返済は、3か月に1回以上の頻度で行わなければなりません。
Q16 個人再生手続では自宅を手放さなくてもよいと聞きました。本当ですか?
法律で定められた要件を満たせば、自宅を手放さないで個人再生手続を利用できます。
例えば、自宅の所有者が自分名義となっていること、自宅に住宅ローンを担保するための抵当権以外の抵当権等が設定されていないことなどです。
この制度を、「住宅資金特別条項」といいます。
住宅資金特別条項を使う場合、住宅ローンは約束どおり支払い続けなければなりません。
また、住宅ローンはいわば「別枠」として扱われますので、免除されることもありません。
滞納がある場合には、滞納分だけでなく、支払いが遅れた分の損害金もすべて支払わなければなりません。
住宅資金特別条項を使って個人再生手続を利用するとこのような負担が生じますので、住宅ローン債権者と事前によく協議しておく必要があるでしょう。
Q17 個人再生を申し立てる費用はどのくらいかかりますか?
裁判所に納めていただく手数料等として約2万円が必要となります。
また、個人再生手続では、個人再生委員[Q18参照]が選任されますので、そのための費用として最低でも30万円が必要となります。
弁護士に依頼して個人再生の申立てをする場合には、多くの事例では個人再生委員が選任されませんので、事前に30万円を準備しておく必要はありません。
しかし、弁護士に個人再生の申立てを依頼した場合には、別途、依頼した弁護士への報酬等を支払う必要があります。
具体的な金額は、依頼した弁護士にお尋ねください。
Q18 個人再生委員とはなんですか?
個人再生委員は、債務者の財産や収入の状況を調査したり、債務者が適正な分割返済の計画を作成するために必要な勧告をしたりすることを職務としています。
個人再生手続は、手続きの利用を申し立てた債務者が、ご自身で現在負っている債務総額や保有資産の評価額の調査、法律で定められた分割返済しなければならない金額の計算、分割返済計画の立案といった非常に難しい作業をしなければなりません。
この作業を進めるに当たっては、債権者と交渉したり不動産業者から査定書を取り付けたりする作業も必要となるでしょう。
個人再生委員には、このような債務者が行わなければならない作業について、必要に応じて助言やサポートを行っていただいています。
個人再生委員は弁護士から選任されます。
Q19 個人再生手続では債務(借金)の一部を返済すればよいみたいですが、残った債務はどうなりますか?
個人再生手続では、債務(借金)は法律上定められた金額[Q14参照]を限度に返済をすればよいこととされています。
残った債務は、原則として免除されることになります。
しかし、養育費の支払義務など法律で定められた一部の債務については、免除を受けることができません。
このような債務は、分割返済をする期間中はほかの債務と同じように分割返済をしていけばよいのですが、最終回の分割返済が終わったときに、残額を一括して支払わなければならないこととされています。
Q20 計画にしたがった分割返済ができなかったらどうなるのですか?
個人再生手続で定めた計画にしたがった分割返済ができないと、裁判所は、債権者の申立てにより、その分割返済の計画を取り消すことがあります。
計画が取り消されると、免除された債務(借金)が免除を受ける前の状態に復活します。
分割返済ができない理由が債務者の責めに帰することのできない事情であった場合で、法律で定められた要件に当てはまるときには、残った債務について免責されることもあります。
なお、計画にしたがった分割返済がやむを得ない理由によって著しく困難となった場合には、裁判所の決定により、分割返済の期間を最長で2年まで延長することができるとされています。