労働審判のQ&A

ア どのような事件が対象となるのでしょうか
 個別労働関係民事紛争です。
 ですから,労働組合が当事者となる事件(集団労働関係紛争)や公務員の雇用が問題となる事件(行政事件)は対象となりません。個別労働関係民事紛争の例としては,解雇や懲戒処分の効力を争う事件,賃金請求,退職金請求,解雇予告手当請求事件,時間外手当請求事件,損害賠償請求事件があります。
イ どのような特徴がありますか
「3つのS」を理念としています。
Speedy(迅速性):
3回以内の期日(概ね3か月以内)で手続が終了するので,訴訟に比べて,迅速に結論を出すことができます。
Specialized(専門性):
労働関係の知識経験を有する専門家が審理に関与します。
Suitable(柔軟性):
事案の実情に応じた柔軟な内容の審判をすることが可能です。
なお,当事者から異議の申立てがあると,審判の効力は失われ,訴訟に移行します。
ウ どのような人が労働審判員になっているのですか
 雇用関係の実情や労使慣行などについて詳しい知識と豊富な経験をもった原則68歳未満の人を最高裁判所が任命します。
エ どのようにすれば申立てができますか
 大阪地裁(本庁)第5民事部に申立書を提出します。
 具体的には,申立書1通,申立書の写し(相手方の数+3通),予想される争点についての証拠書類の写し(相手方の数+1通),申立手数料(手数料早見表(PDF:48KB)の「民事調停の申立て,労働審判手続の申立て」欄をご覧下さい。),郵便切手,資格証明書(当事者が法人であるときや法定代理人であるとき)等を提出することになります。
 申立書には,申立ての趣旨や理由を記載しますが,専門的な内容であることや原則3回以内で終局に至る手続であることから,充実した書面を提出するために記載内容や申立手続について,必要に応じて法律の専門家である弁護士に相談することが望ましいでしょう。
オ 費用はどれくらいかかるのですか
 民事調停と同じ費用(通常の裁判より低額)です。手続費用として収入印紙を申立書に貼付しますが,たとえば200万円の支払を求める申立てでは,7500円の収入印紙が必要です。なお,訴訟手続に移行した場合,訴えを提起する場合に要する印紙との差額を納付する必要があります。
 その他,弁護士を依頼したときには,弁護士費用がかかります。身近に弁護士のいない方は,弁護士会の相談窓口にお問い合わせください。
カ どのような審理をするのでしょうか
 労働審判手続は,原則として,非公開です。
 期日では,主張や争点の整理のほか,書証の取調べと審尋(しんじん)を中心とした審理手続が行われます。労働審判手続は,訴訟の場合に比して,格段に口頭での機動的な審理が重視されているのも特徴の一つです。
キ どのような点に留意すればよいのでしょうか
 労働審判手続は,原則として,3回以内に終局する手続であり,第2回期日までの審理で,調停案が示されるため,第1回期日から充実した審理ができるよう事前準備がとても大切です。
 また,労働審判手続は,迅速,適正かつ実効的な紛争の解決を目指すものであり,その成否の重要なポイントは,調停(話し合い)による事件解決への試みにあるといえます(この点で,調整の余地が非常に乏しい事案は,必ずしも労働審判に適しているとはいえません。)。
 そのため,申立てにあたっては,事前に,調停による解決も考慮に入れて,ある程度柔軟な姿勢で対応(譲歩)することを十分検討しておくことが望ましいといえます。
ク 調停が成立しない場合どうなるのですか
 多くの場合(その他),審判がされます。
 審判は,審理の結果認められる当事者間の権利関係や労働審判手続の経過を踏まえて,労働審判委員会によってされます。
ケ 審判に不服がある場合どうしたらいいのでしょうか
 労働審判の口頭告知を受けた日又は審判書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に,裁判所に異議の申立てをすることができます。
コ 審判に対する異議の申立てがされた場合は,どうなるのですか
 この場合,審判は失効し,労働審判手続の申立ての時に訴えの提起があったものとみなされて,そのまま自動的に訴訟へ移行します。
サ 大阪地裁での労働審判の動向
 事件申立の動向
 年間約300件の申立てがあります。
 事件の内訳
 申し立てられた事件の内,75%~80%は調停が成立し,約10%~20%が審判となっています。他に申立ての取下げや労働審判法24条による終了があります。
シ その他
 労働審判の申立てがあっても,事案の性質に照らして労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないような場合は,労働審判法24条により手続が終了し,訴訟手続に移行することがあります。
 くわしくは,裁判手続 民事事件Q&A
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    11. 商事部(第4民事部)
      1. 1_1.商事部(第4民事部)が取り扱う事件の種類
      2. 1_2.申立ての場所
      3. 1_3.事件処理の状況・運用等に関する資料
      4. 2_1 会社非訟事件とは
      5. 2_2(1)会社法と旧商法との適用関係
      6. 2_2(2)解散届,貸借対照表・財産目録の提出の要否
      7. 2_2(3)帳簿資料保存者・重要資料保存者の選任申立ての要否
      8. 2_2(4)清算人選任申立ての方法等
      9. 2_3一時取締役・監査役職務代行者(仮役員)選任申立ての方法等
      10. 2_4株主総会招集許可申立ての方法等
      11. 3_1手形・小切手訴訟の手続の概要
      12. 3_2訴状の記載内容等
      13. 3_3答弁書の記載内容等
      14. 4申立書・訴状等書式サンプル一覧
    12. 労働部(第5民事部)
      1. 1. はじめに
      2. 2. 労働事件にはどのようなものがあるでしょうか
      3. (1) 解雇の有効性に関する事件
      4. (2) 整理解雇に関する事件
      5. (3) 解雇予告手当に関する事件
      6. (4) 有期雇用において雇用の終了(雇止め)に関する事件
      7. (5) 配置転換に関する事件
      8. (6) 賃金に関する事件
      9. (7) 退職金に関する事件
      10. (8) 労働条件に関する事件
      11. (9) 労働委員会の救済命令などの取消訴訟(労働組合法27条の19など)
      12. (10) 公務員の労働に関する事件
      13. (11) 労災保険の支給に関する事件
      14. 3. 労働事件の解決のためにどのような手続があるでしょうか
      15. 4. 第5民事部で行われている手続にはどのようなものがあるのでしょうか
      16. 労働審判のQ&A
    13. 倒産部(第6民事部)
    14. 建築・調停部(第10民事部)
      1. 1_1.建築・調停部(第10民事部)について
      2. 1_2.建築関係訴訟
      3. 1_3.民事調停事件
      4. 1_4.借地非訟事件
    15. 執行部(第14民事部)
      1. 不動産執行申立てに必要な書類等
      2. 自動車執行申立てに必要な書類等
      3. 競売申立時の代位登記について
      4. 代金納付手続
      5. 代金納付手続に必要な書類等
      6. 引渡命令申立
      7. 引渡命令(ひきわたしめいれい)から強制執行申立(きょうせいしっこうもうしたて)までの流れ
      8. 不動産引渡命令の執行文付与・送達証明申請をされる方へ
      9. ローン制度の利用
      10. 債権執行
      11. 債権者の方へ(注意書)
      12. 扶養義務(養育費・婚姻費用等)に係る債権差押命令申立ての説明
      13. 新法により設けられた新しい民事執行手続の概要
      14. 執行手続書式例
      15. 財産開示手続の申立てをされる方へ
      16. 預貯金債権等の情報取得手続の申立てをされる方へ
      17. 給与債権の情報取得手続の申立てをされる方へ
      18. 不動産の情報取得手続の申立てをされる方へ
    16. 交通部(第15民事部)
      1. 1. 交通部(第15民事部)について
      2. 2. 交通部(第15民事部)の取り扱う事件
      3. 3. 交通事件の審理について
    17. 医事部(第17・19・20民事部)
      1. 第1節 医事部の誕生
      2. 第2節 医事部で取り扱う事件
      3. 第1節 はじめに
      4. 第2節 訴え提起から争点整理
      5. 診療経過一覧表の利用
      6. 専門的知見の活用
      7. 争点整理案の積極的な活用
      8. 当事者の理解と協力
      9. 第3節 証拠調べ
      10. 集中証拠調べの実施
      11. ポイントを絞った尋問の実施
      12. 鑑定とは?
      13. 鑑定人の選任手続について
      14. 鑑定人となられる皆様へ
      15. 第5節 判決又は和解
      16. 第1節 はじめに
    18. 知的財産権部(第21・26民事部)
      1. ご案内
      2. 第一審の管轄
      3. 控訴審の管轄
      4. 知財訴訟の訴額算定基準
      5. 書類及び電子データの提出について
      6. 証拠説明書提出のお願い
      7. 計画審理モデル<計画審理による知財訴訟の迅速解決>
      8. 付記弁理士
      9. 第1部(知的財産権制度,訴訟手続の概要など)
      10. 第2部(訴訟準備など)
      11. 特許・実用新案Aコース
      12. 特許・実用新案Aコースの答え
      13. 特許・実用新案Bコース
      14. 特許・実用新案Bコースの答え
      15. 特許・実用新案Cコース
      16. 特許・実用新案Cコースの答え
      17. 意匠コース
      18. 意匠コースの答え
      19. 商標コース
      20. 商標コースの答え
      21. 著作権コース
      22. 著作権コースの答え
      23. 不正競争防止法コース
      24. 不正競争防止法コースの答え
    19. 執行官室
      1. 動産執行の申立て,不動産引渡(明渡)執行の申立て,保全処分の執行の申立てに必要な書類
    20. 大阪簡易裁判所調停係
      1. 無料調停手続相談開催のお知らせ
      2. 夜間の調停手続案内
    21. 大阪家庭裁判所の手続案内
      1. 子の返還申立手続の書式について
      2. 面会交流の調停等申立手続の書式について
      3. ハーグ条約関連リンク
      4. english
      5. ハーグ条約実施法関連Q&A
    22. 家事手続案内について
    23. 申立てに使用する書式等
    24. 家事事件の各種申請で使う書式について
    25. 大阪家庭裁判所後見センター(後見サイト)
    26. 人事訴訟事件について
    27. 財産管理事件について
    28. 遺産分割調停について
    29. 遺産分割以外の相続関係調停について
      1. 遺産分割(手続について)
      2. 遺産分割(申立等で使う書式)
      3. 遺留分減殺
      4. 遺留分侵害
      5. 寄与分
      6. 特別の寄与
      7. 遺産に関する紛争
    30. 即日審判(家事事件)について
    31. ハーグ条約実施法関連サイト
    32. 後見サイト(大阪家庭裁判所後見センター)
      1. 後見等開始申立てをお考えの方へ
      2. 総合支援型後見監督人の選任の運用開始について
      3. 市町村のご担当者の方へ
      4. 総合支援型後見監督人の方へ
      5. 後見等開始申立て関係書式
      6. 成年後見申立てセットの取寄方法
      7. 後見人等に選任された方、開始後の各種申立てをお考えの方へ
      8. 未成年後見人選任申立てをお考えの方へ
      9. 未成年後見人に選任された方へ
      10. 任意後見監督人選任の申立てをお考えの方へ