トップ > 各地の裁判所 > 大阪地方裁判所/大阪家庭裁判所/大阪府内の簡易裁判所 > 裁判手続を利用する方へ > 労働部(第5民事部) > (6) 賃金に関する事件
ア 定められた賃金の支払を受けられないという事態は,会社が倒産直前というような場合でもない限り,余り考えられません。
しかし,使用者に対する債務があった場合に,勝手に相殺(そうさい)され,賃金が全額支払われないというような場合はあるかも知れません。
労働基準法は,賃金支払の諸原則(PDF:49KB)を定めており,その1つに,賃金はその全額を支払わなければならないという賃金全額払いの原則があります(労働基準法24条1項)。
したがって,使用者は,原則として,労働者の同意なく,労働者の賃金を相殺(そうさい)することはできません。
イ また,残業代も賃金に関する争いですが,サービス残業という言葉があるように残業代を支払ってもらえないという事態は少なくないようです。
労働基準法は,原則として,休憩時間を除いて,1日に8時間を超えて労働させてはならず,1週間について40時間を超えて労働させてはならないと定めています(労働基準法32条)。
この時間を超えて働いた場合は,超過時間につき2割5分増しの賃金の支払を求めることができ(平成22年4月1日,法律改正により,一定の中小企業を除き,月60時間を超える部分については,5割増しとされました。),休日労働については3割5分増しの賃金の支払を求めることができます(労働基準法37条1項,労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。
なお,労働が午後10時から午前5時までの深夜にかかる場合には,上記時間外・休日割増賃金とは別に深夜割増賃金として,さらに2割5分増しの賃金の支払を求めることができます(労働基準法37条3項)。
ウ 賃金の消滅時効期間については,改正後の労働基準法(施行日令和2年4月1日)の内容に注意する必要があります(労働基準法115条,同法〔附則〕143条3項,労働基準法の一部を改正する法律〔令和2年法律第13号〕附則2条2項)。
エ 裁判所は,労働者の請求により,判決で,残業代を支払わなかった使用者に対し,これと同額の付加金の支払を命じることができます(労働基準法114条本文)。この付加金の請求期間には制限があります。請求期間については,改正後の労働基準法(施行日令和2年4月1日)の内容に注意する必要があります(労働基準法114条ただし書き,同法〔附則〕143条2項,労働基準法の一部を改正する法律〔令和2年法律第13号〕附則2条1項)。