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相続人の範囲,出生から死亡までの連続した戸籍について(PDF:356KB)
遺産分割調停の手続について
詳細版(PDF:429KB)はこちら
1 遺産分割調停とは?
当事者間での話合いによる遺産分割が困難な場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。遺産分割調停は、あくまで当事者が話し合う場であり、申立人と相手方の主張を聴きながら、誰にどの遺産をどれだけ分けるのかを合意できるように話合いを促す手続きです。調停の申立てがあると、家庭裁判所は、裁判官と民間から選ばれた調停委員(2名以上)とで調停委員会を構成し、調停期日を決めて調停を進めることになります。
なお、遺産分割調停では、基本的に相続人全員と同時に話し合いをするのではなく、時間を分けて当事者それぞれの話を、調停委員が聞くことになります。また、調停は非公開で、関係者の秘密が調停委員等から外部に漏れることはありませんので、ご安心ください。
2 申立ての流れ
① 申立人、相手方について
申立てをする側が「申立人」となります。遺産分割調停は、すべての相続人や包括受遺者(遺言書で「3分の1」のように割合を示して遺産を与えられた者)が当事者となる必要があるため、「申立人」以外の相続人が「相手方」となります。1人が申立人となることもできますし、複数名が申立人となることもできます。
② 申立て先(管轄)について
各地の家庭裁判所は、それぞれ担当する地域が決まっています。そのため、調停では、相手方の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。また、申立人と相手方全員の合意により、相手方の住所を管轄する裁判所と異なる裁判所へ申し立てることもできます。
また、管轄がない裁判所に申し立てられた場合、裁判官の判断により、管轄のある裁判所に事件を送ることがあります。
③ 申立てに必要な書類について
申立書、当事者目録、遺産目録、相続関係図などに記入し、管轄のある裁判所に提出することになります。詳しくは遺産分割申立必要書類一覧をご覧ください。
3 遺産分割調停における留意点について
① 相続人の範囲は確定していますか?
遺産分割調停では、相続人全員の参加が必要です。そのため、戸籍などで相続人を確認する必要があります。
戸籍上では相続人であっても、その前提となる養子縁組の有効性などについて争いがあるケースでは、遺産分割手続の前に、その身分関係について人事訴訟などで先に解決を図るべき場合があります。
② 相続人の中で、行方不明や生死不明の方がいませんか?
戸籍や住民票などで調査をしても行方が分からない場合、「不在者財産管理人」を家庭裁判所で選任することになります。
また、7年以上生死が分からないときには、「失踪宣告」という手続も可能です。
③ 相続人の中に、未成年や判断能力に疑いのある人がいませんか?
相続人の中に未成年者がいる場合は、その未成年者本人に代わって親権者などが法定代理人として調停に参加することになります。
ただし、親権者も、同じく相続人である場合には、未成年者の不利益にならないために、家庭裁判所で「特別代理人」の選任をする必要があります。(親権者自身が相続人ではなくとも、相続人である複数の未成年者の親権者である場合も、同様の手続が必要です。)
また、認知症などで判断能力に疑いがある人には、「後見等開始の申立て」を家庭裁判所ですることになります。
④ 遺言や遺産分割協議書がすでにありませんか?
遺産分割調停は、まだ分けられずに残っている遺産について、分割をすすめていく手続です。そのため、遺言書などで分割方法が指定されている遺産は、遺産分割調停では取り扱うことができません。遺産分割協議書がすでにある場合も同様です。ただし、相続人全員の合意があれば、遺言書と異なる分割をすることもできます。
遺言書や遺産分割協議書の有効性が争われているケースでは、遺産分割調停ではなく、先に民事訴訟で解決を図るべき場合があります。また、遺言書によって、自らの遺留分を侵害されたと主張する場合にも、遺産分割調停ではなく、「遺留分侵害額(減殺)請求」の調停をすることになります。
なお、遺言書や遺産分割協議書に記載されていない遺産については、遺産分割調停を行うことができます。
⑤ 遺産の範囲に争いがありませんか?
遺産分割調停の対象となる遺産は、被相続人の所有や名義で、今も残っている遺産です。従って、例えば被相続人の存命中や死亡後に、他の相続人が引き出した預貯金に関しては、原則、遺産分割調停・審判で扱うことができる遺産とはなりません。ただし、例外もありますので、詳細は遺産分割調停の手続について(詳細版)(PDF:429KB)の4ページ目「⑤ 遺産の範囲に争いがありませんか?」をご覧ください。
4 調停を円滑に進めるために
家事調停は、当事者双方が主体的に主張立証をしつつ、お互いに譲り合うべきところは譲り合うことで合意を目指すことで、お互いに納得できる解決策を見いだすための手続であり、家庭裁判所(裁判官及び調停委員)は公平中立的な立場からそのお手伝いをするものです。
調停を円滑に進めるためには、感情的な言い争いをすること等は控え、前向きな気持ちで、遺産をどのように分けるのかについて話し合う必要があります。
調停期日には、調停委員が、限られた時間内で、出席された相続人全員のお話を順番にお聴きしますので、まとめて要領よくお話しいただくことが大切です。また、効率的に話合いを進めるために、口頭による説明が難しい場合には、自身の意見を書面にして提出してください。その際に、資料などを添付することもできます。
5 調停で話合いがつかなかったら
相続人の範囲や遺産の範囲など、遺産分割の前提となる問題について、当事者双方の言い分があって話合いで合意ができないときには、先に人事訴訟や民事訴訟で前提問題について、解決する必要があります。そうした場合には、いったん調停を取り下げてもらったり、「調停をしない」旨の決定をして調停を終了させたりする場合があります。この場合には、調停手続から審判手続へ移行することもありません。
遺産の分割方法について、調停で話合いがつかないときには、原則として審判という手続に移行し、家庭裁判所が分割方法を判断することになります。この場合、遺産の種類や性質を考慮しながら、法定相続分とは異なる分け方をすべき事情の有無や程度等について厳密な審理が行われます。
また、審判による分割方法には限界があります(例えば、競売でしか分けられない場合など)から、相続人各自の生活状況や希望に沿えない結論にならないようにするためにはどうしても一定の合意をしなければならない場合があります。したがって、機会があればいつでも話合いで解決する用意があるという気持ちを最後まで失わないように努めてください。