第2-2 清算に関する事件(会社非訟事件)

4.清算人選任申立ての方法等

Q1 どのような場合に清算人選任の申立てがされるのですか。
1. 清算人とは、解散した会社の清算手続を行う清算株式会社の一機関で、
 ア 定款で定める者
 イ 株主総会の決議によって選任された者
 ウ 上記ア、イで清算人になる者がいない場合は取締役
が、それぞれ清算人となります(会社法478条1項)。
上記ア~ウで清算人となる者がないときは、裁判所が清算人を選任することとなります(会社法478条2項)。
2. 清算人選任の要件は次のとおりです。
(1)利害関係人による申立てであること。
 清算株式会社の清算について法律上の利害関係を有するものであり、一般的に、株主、監査役、債権者等が考えられます。
(2)会社法478条1項によっても清算人となる者がいないこと。
 会社が合併及び破産以外の事由で解散した場合(株主総会決議、みなし解散等)で解散当時の取締役が生存している場合は、その者が法律上当然に清算人になりますので(会社法478条1項1号)、裁判所は清算人を選任できません。
Q2 債権譲渡の通知の受取りや不動産の譲渡だけお願いしたいのですが。
 当庁では、清算人に対して会社法が規定する厳格な清算手続のすべてを行うことを求めず、申立人が希望する限定的な清算事務のみを行い、当該事務が終了した時点で、非訟事件手続法59条1項により選任決定を取り消して当該清算人の事務を終了させ、選任に係る登記を裁判所書記官からの嘱託で抹消するという運用(スポット運用)も行っています。

図版:選任決定後、清算人の選任に係る登記を清算人が行い、申立人の希望する清算事務を遂行し、選任取消決定(非訟事件手続法59条1項)して、裁判所書記官が清算人の選任に係る登記の抹消を行う。

Q3 どのような手続で申し立てればよいのでしょうか。
1 清算人選任申立ては、清算株式会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に行ってください。大阪府下の清算株式会社であれば、大阪地方裁判所本庁、同堺支部、同岸和田支部のいずれかの裁判所になります。
大阪地方裁判所
本庁管轄
大阪市、池田市、箕面市、豊能郡、豊中市、吹田市、摂津市、茨木市、高槻市、三島郡、東大阪市、八尾市、枚方市、守口市、寝屋川市、大東市、門真市、四條畷市、交野市
大阪地方裁判所
堺支部管轄
堺市、高石市、大阪狭山市、富田林市、河内長野市、南河内郡、羽曳野市、松原市、柏原市、藤井寺市
大阪地方裁判所
岸和田支部管轄
岸和田市、泉大津市、貝塚市、和泉市、泉北郡、泉佐野市、泉南市、阪南市、泉南郡

2 清算人選任申立ては、書面でしなければなりません(会社非訟事件等手続規則1条)。

3 申立手数料は1000円です(民事訴訟費用等に関する法律別表第1の16項)。申立書の余白に収入印紙 1000円分を割印をせずに貼付してください。
併せて、予納郵便切手が3500円分(内訳500円×4、100円×7、84円×5、20円×10、10円×10、5円×10、2円×10、1円×10)必要となります(堺支部及び岸和田支部も同様)。

4 スポット運用の円滑な実施のために、一般的に、添付資料として、次のような書類を提出いただいています(ただし、事案に応じて異なります。)。

不動産の任意売却のための申立て
・申立人が利害関係人であることを証する書面
(当該物件の担保権者ある場合には、不動産登記事項証明書で分かります。)
・清算株式会社の登記事項証明書
・不動産登記事項証明書
・固定資産評価証明書
・不動産の価格を明らかにする書面(評価書、査定書等)
・買付証明書
・売買契約書案
・売却代金の分配案
債権譲渡通知の受領のための申立て
・申立人が利害関係人であることを証する書面
・清算株式会社の登記事項証明書
・債権譲渡契約書
・債権譲渡通知書案

※清算株式会社が破産手続を経た会社である場合には、破産手続開始決定書(破産宣告書)も提出いただいています。

※上記添付資料のうち清算株式会社の登記事項証明書及び不動産登記事項証明書以外については、当面はコピーで結構ですが、原本が必要となる場合もあります。

Q4 どの程度費用がかかるのでしょうか。
 申立手数料・予納郵券以外に、清算人に対する報酬・費用の支払のために、予納金の納付が必要となります。
 予納金額につきましては、事案(清算人の行う清算事務の内容)によって異なります。
 不動産の任意売却を目的とする申立ての事案では20万円から50万円、債権譲渡通知の受領を目的とする事案では10万円ないし20万円程度の予納をした事例が多いといえます。
 ただし、清算事務を遂行する上で清算人による調査を行うことが必要である場合や、清算事務遂行中に問題が生じるおそれがありその解決に労力を要することが予想される場合(当然清算人の就任期間も長くなります。)には、上記より高額になります。
Q5 申立てから清算人選任までの流れは、どのようなものですか。
 清算事務が単純かつ明快な事案については、特段、審問期日は指定しませんが、それ以外の事件につきましては、申立てから1週間程度で審問期日を指定しています。
 通常、審問期日で予納金額を定め、予納があり次第、清算人選任決定を行います。
 特に問題がない限り、正式申立てから選任までは、通常10日から2週間程度です。
 なお、第4民事部では、申立て後の手続が円滑に進むように、受付相談を行っていますので、ご利用ください(第4民事部商事非訟係までご連絡ください。)。

図版:申立てから清算人選任までの流れ図。受付相談から申立てをし、審問までに1週間程度かかります。審問時に予納金額も提示します。ただし、審問期日を指定しない場合もあります。その後、選任決定が行われ、申立人による予納金納付があり次第決定します。

Q6 申立てに当たって特に準備しておくことはありますか。
1 清算人選任が目的の達成に最善の方法であるかどうか、ご検討ください。
次の場合のように、清算人を選任したとしても清算人が申立人の希望するとおりの事務ができない可能性が高いものや、申立ての目的に比べて費用が高額になるものがあります。
(1) 債務の弁済、担保権設定登記の抹消、境界確定等、清算人が自ら一定の判断をしなければならない場合
清算事務を行うに当たり、清算人が的確に判断する資料が十分になく、行うべきか否かの判断がつかない場合、清算人が選任されても、結局清算人を代表者とする清算株式会社を相手に訴訟をすることになります。
このような場合には、清算人を選任する方法以外に、特別代理人を選任して(民事訴訟法35条1項)、清算株式会社を相手に担保権設定登記抹消登記手続請求訴訟や境界確定訴訟を行う方法(一般的に、清算人選任の申立てに比べて費用は低廉で済むと思われます。)がありますのでご検討ください。
(2) 清算業務の終期の見通しが立たない場合
清算業務が長期化するほど、清算人が予想外の業務をする必要が生じる危険性が高くなることから、その危険性を考慮して予納金が高額化することになります。
2 清算人が予定された清算事務を円滑に行えるようするため、申立人には、一般的に、清算事務の遂行に必要となる事前の準備にご協力をいただいています。
例えば、不動産の任意売却のための申立てであれば、通常、次のような点に関する準備をしていただいています。
(1) 売却代金額が適正か否かについて
不動産の価格を証する書面(評価書、査定書等)、固定資産評価証明書を提出いただいています。
(2) 売却代金の債権者への分配について
分配案を準備していただいています。売却代金が担保権者以外の者に分配される場合には、債権者一覧表の準備も必要となります。
(3) 固定資産税などの税金の滞納について
物件売却後に徴収手続が行われる可能性もありますので、あらかじめ、税金の滞納についての調査を可能な範囲でお願いしています。
(4) 申立人以外の担保権者や滞納差押えがなされている場合について
申立人以外の担保権者や滞納差押えがなされている場合には、売却されてもそれらの担保権や差押登記はそのまま残ります。これらを抹消するために、事前に他の担保権者や差押庁と、登記抹消のための交渉をしていただいています。
Q7 清算人の候補者を推薦することはできますか。
 清算人は、中立性を確保するため、原則として、裁判所が適任と考える弁護士を選任しています。
 したがって、原則として、清算人候補者の推薦は受け付けていません。
Q8(1) 申立書には、どのようなことを記載すれば良いのですか。
1. 申立書には、次の事項を記載してください(会社非訟事件等手続規則2条)。
(1)当事者の住所、氏名。代理人があればその住所、氏名。申立人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリ番号を含む)。
(2)申立てに係る会社の商号及び本店の所在地
(3)申立ての趣旨及び原因並びに申立てを理由づける事実。附属書類の表示等
  具体的な特定の事務の遂行だけを求める場合には、その事務の内容を具体的に記載してください。
(4)申立ての年月日、裁判所の表示
(5)その他裁判所が定める事項
2 申立書に書ききれない事情等がありましたら、申立書とは別に陳述書を作成してください。
Q8(2) 申立書には、どのような資料を添付すれば良いのですか。
 申立ての趣旨及び申立ての理由を明らかにする資料が必要となります。
 また、スポット運用の円滑な実施のため、一般的に、次のような書類を提出いただいています(ただし、事案に応じて異なります。)。
不動産の任意売却のための申立て
・申立人が利害関係人であることを証する書面
(当該物件の担保権者ある場合には、不動産登記事項証明書で分かります。)
・清算株式会社の登記事項証明書
・不動産登記事項証明書
・固定資産評価証明書
・不動産の価格を明らかにする書面(評価書、査定書等)
・買付証明書
・売買契約書案
・売却代金の分配案
債権譲渡通知の受領のための申立て
・申立人が利害関係人であることを証する書面
・清算株式会社の登記事項証明書
・債権譲渡契約書
・債権譲渡通知書案
Q9 申立書のサンプルはありますか。
サンプルはこちらをご参照ください。

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